セカコイ イメージ曲ss

□消失の旋律
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日本に帰ってきて
一人暮らしをはじめた。

親は最初嫌がってたけど 無理やり出てきた。
会社を引き継ぐんだからいいじゃないかと言い訳してみたが
最近は辞めてほかのところで実力を出したいと思い始めている。

そんなこと言ったら怒られそうだけど…。

大体過保護すぎるんだ
家の親は。

箱入り娘ならぬ箱入り息子みたいに扱われている
俺の人生は 困ったこともない
成功つづきだ。

大学の友達が言っていた

「どうせ 律は
苦労しなくても将来安定してるのに
なんで遊ばないの

誰にも その過程をみられない
結果をださない
努力ほど意味ないものってないぜ」

そのとおりなんだろう。
だけど
俺はそんな努力ばっか続けている。

だって

遊んだら思い出さざるを得ない
人間が居る。

もう終わっているのに
開放してくれない人がいる。


「…」

おかしいな

あれから何年たったと思っているんだろう。

現実逃避のつもりで続く読書は日に日に数を増す。

誰もみちゃいないのなんて

自分が一番分かってるのに

醜くなっていく俺は もうとっくに自分自身に失望していた。







バタタッ


休日。一人でごろごろしていると
隣で何かが倒れる音がした。

都会だからだろう 当然のように

隣人が男か女かも
俺は知らない。

だけど たまにしか帰ってこないのは
物音でわかってた。



ま 興味ないけど。


ふとつけたテレビでは
くだらないトークで盛り上がっている映像が流れていた。

何時からだろう
笑えなくなったのは。

このくだらないトークも
昔は
くだらなくても
笑えたんだけどな。

変える気のないテレビの上の時計は


もうとっくのとうに止まったままだった。






「…よし なんかするか…」

明日からまた仕事だが
休日だとすることがない
怠惰な生活を振り切るように
頭を掻いて俺は外に出た。

すると

「政宗! 政宗!!」

空気がゆがむような猛暑の空気の中で
隣の部屋の前
叫んでる男が居た。

結構大柄だ。


隣の人の友人なのだろうか。

さっきの物音は まさか。



「おいっ 俺今携帯ないんだ
お前 救急車よんでくれ!」

「わ わかりました」


家のマンションでとんでもないことになったと
俺は久々にパニくり
救急車を呼んだ。

隣の人は

男だった。




妙に白い肌で
病的にやせている。

これはもう だめなんじゃないか?


救急車を待つ間

俺はやっぱり冷め切った心でそう
思っていた。
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