セカコイ イメージ曲ss

□桜色の想い出
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受験勉強!

という言葉をささげた町並みの中
ちょっとはずれたところに
桜並木があった。

誰も通らないそこは

律とおれの待ち合わせ場所だった。


今日は何をしようか

海を見にいこうか

勉強で忙しくて
遠出はできないけど

二人で居られたら

それがいいよな

なんて。

あの頃のおれは

何年たっても律と一緒に居ようって
律を守ろうって


覚悟ができてた。

まさか


あいつから居なくなるなんて
夢にも思ってなかった。








「ねー 政宗ぇ
なんで今日すっぽかしたのよぉ」


電話先
甘ったるい声。
うるさいな。 てか誰だっけ?

やっぱり思いつきで彼女なんて作るもんじゃない

冗談じゃないけど
本気じゃない

ってやつか。

そういえば

律も最初は遊びだったな



俺は横たわりながら携帯を首にはさんで
話す。

「今日頭痛くて」

「えーそんな理由ー?」


この女の頭に 心配

という文字はないのか。

ヤることしか考えてない。 まあ
それが楽で付き合ったんだけど。

すこしは軽くなると思ってた。

胸が裂けて苦しかった。

穴埋めにもなりゃしない。
きっと今の女がいけないだけだ

俺は何度も一人そう繰り返す。


「明日は会おうよぉ」

「無理」

「会おうってー。桜がさ
そろそろ咲くんだよ みにいこー」


「…」





桜?





『この桜の木
俺好きなんです 綺麗で
はかなくて ああ 先輩みたいだなあって』




「あー でも
この雨じゃ全部落ちちゃうかなあ」



「は? 今雨降ってんの?」


「気づかなかったのー?
政宗ってばまたあの分厚いカーテン閉めきってるんでしょー。
しょうがな…」

彼女からの電話なんてどうでもよかった。
携帯電話を切り
ポケットに入れ
何も持たないまま部屋から飛び出す。





あの 町外れの桜並木

律と今年見ようって

約束したんだ。

雨で花びらが落ちてしまったら


俺は。
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