セカコイ 長編

□小野寺律=りっちゃん!2
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喫茶店よって

ちょろっと店みて

噴水みて


ゲーセンいってユーフォーキャッチャーやって

本屋で好きな本について語っていたら


もう


終電ちかくなってしまった。


律は大きいぬいぐるみを抱えている。
ふわふわしてて、ソラ太が持とうかといってくれたけどもっていたかったから断ったのだ。


「人形もったまま上目遣いとか
わざとやってんのか…」

ソラ太がぼそっとなんかいったけど

ちいさくて分からなかった律はクビをかしげた。


いいか

今日はたのしかった。



うん






あまりにも予想外に、ね。






(ごめん あずさ)




こんな想い

今日でやめる

やっぱ バイトして

まじめに稼ぐよ

そして君に尽くす









できるかな 俺に できるよな


だって


できなきゃ、最低だ。



「…やっぱな」

すると、ソラ太の長い指に、急に律はあごをかるく持ち上げられた


どういうことだろう

ソラ太は澄んだ目で言う。



「なんか悩み事あんだろ
出会い系するくらいだ



俺でよかったら 話せ」


律は息をのんだ。

いえるわけないだろう だって同情の余地などどこにもないのだから。


「なんでもないで す」

「うそつけよ なあ、これっきりってことないよな?」


「…」







「高野政宗」




「え」


ソラ太は急にそういう。
つかむ手が妙に痛い  だ だれの名前?



「俺の名前だ
本名だ」


「えっ―…な、なんでわざわざ」


「お前を遊びで終わらす気がないからに決まってんだろ」





胸が、高鳴った。




苦しくて


苦しくて




「お前も…教えて

何もつながりなしに 今夜、かえせない」



言っていることは強気だけど
ソラ太の肩は小さく震えていた。


たった一日だけ

でも

日ごろからメールで語り合っていた二人は
もう恋人のように心の距離が近かったのだ
律はおろかなことにそれをいまさら気づいた。






本名


言ったら、ばれてしまう。




小野寺律 とパソコンでうとうものなら
そこそこ有名な家柄で
律自身もテレビにでたことがあるので
すぐばれてしまうのだ。


だから 小野寺律は嘘をつく


ソラ太を見上げ、震える唇で





「俺の本名は   織田律






織田律=りっちゃんなんです」










それを聞いて、ソラ太は眼を見開いた
嘘だろ?

しかしその隙 手がゆるみ
律はスカートを翻して逃げ出した。


静止の声

無視
無視
無視





だって お願い

涙がこぼれる。あまり持久力はないんだろうか
彼は追ってこない。




信じられない


相手は男だってのに


すがる 捕らえて話さない 目

ああ


こんなのってありか








(俺は 出会い系で釣る予定だった
男に 初恋したってことかあああああああああああ!!)


律の心の叫びは 騒音を奏でる都会に飲み込まれていった。
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