†liberte†

□ナナ樣から
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『甘いスパイス』

風邪を引くと恋人がミルク粥を作ってくれる。
少し甘くて、振り掛けたチーズの味がアクセントですごく美味しい。
味もだけど、栄養もあってこれは僕たちの風邪の時の定番メニュー。

甘やかし屋の彼は熱が上がって身動き取れないときは当然、
少し横になっていれば直っちゃうぐらいの風邪の引き始めのときでも作ってくれて、
そして手ずから食べさせてくれる。
まるで雛鳥みたいに僕は口を開けて待っているだけ。
『ふー、ふー』ってしてから「はい」ってスプーンを差し出す。
僕は「あーん」って口を開けるだけ。
雛鳥みたいに。
子猫みたいに。

風邪が酷くて鼻が馬鹿になって味覚が無くても
彼がスプーンで掬って『ふー、ふー』ってしてくれると、不思議と甘く感じる。
味覚なんてぜんぜん無いのに。
『ふー、ふー』ってされて差し出されると、なんでか。
なんでか?なんて、そんなこと分りきってる。
それは、僕がそれだけ彼に夢中だってこと。
彼の吐息は甘いスパイス。
味覚がなくても感じるスパイス。
甘くて、少しくすぐったくて。
安心できて、ほっとするスパイス。

そして今日も『ふー、ふー』ってしてくれて、目を閉じて口を開ける。
丁度いい温度の甘いお粥が喉を通る。
栄養もだけど、心の栄養もチャージ。
そして僕は風邪を引いてもあっという間に良くなっちゃうのだ。




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