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□ちょこれいと
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年明けから1ヶ月程過ぎた頃
あたしはバイトに明け暮れていた
「 いらっしゃいませー 」
いつものようにやる気のない声で客を迎える。
「 よォ、今日もだるそうじゃねーか 」
馴れ馴れしく声をかけてきたコイツ。銀色の天然パーマをした、(一応)あたしの先輩
「 また来たんスか、何も買わないなら出てってくれます暇じゃないんで 」
「 俺は客だぞ、客に帰れってお前それでも店員か 」
小さく溜め息をついて肩を竦めた後、呆れたようにあたしの頭を軽く小突く。
「 何する…「 コレ 」
「 え? 」
「 コレ買うからさっさと会計しろ 」
そう言った先輩の手にはいつの間にかチョコレート
「 自分チョコっスか、 」
「 ちげーようるせえな 」
ぴっ、 とバーコードを読み取り、268円です と呟く
「 …オイ 」
「 なんスか 」
ちょこんと目の前に置かれた先ほど会計を終えたチョコレート
「 早く持って帰らないと溶けるっスよ 」
「 ――…。 」
「 はい? 」
聞こえなくて聞き返すと、ふっと顔が近づいて
「 ハッピーバレンタイン、 」
そう、小さな声で呟いて帰っていった。
「 …っ、ギザなヤローっス… 」
赤くなった顔を隠すように俯いて、
チョコレートを静かに制服のポケットにしまった。
チョコレート
バレンタインは女の子が送る日なのにな、
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