人々が創造せし大空の物語
□大空の守り人達(本編)
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「嫌です!初代、俺を生まれ変わらせないで下さい!」
「生まれ変わりたくない?なぜだ?そなたはあんなにも、アルコバレーノ達との仲直りを望んでいたではないか?」
「以前はそう思っていました。でも今の俺は・・・もう無理です!」
あの時の絶望を。
裏切りによる悲しみを。
自分の言葉に耳を傾けてくれない失意を。
毎日繰り返される悪夢の苦しみを。
それをもう一度受けるなんて、絶対に耐えられない。
その可能性を受けるかもしれない恐怖に耐えるなんて、自分には出来ない。
それにやり直した所で、もうリボーン達は以前のようには出来ないだろう事をツナは悟っていた。
だって自分は、絶対にリボーン達を疑い続けてしまう。
いつか裏切られてしまうのではないかという恐怖をずっと抱き続けてしまう。
笑顔を向けた所で、その笑顔は猜疑心と恐怖からきっとぎこちないものになってしまうだろう。
リボーン達がどんなに友好的に接してくれても・・・自分はきっと彼らとの間に線を引いてしまう。
それが分かっているからこそ、ツナは初代が自分に与えてくれようとしているやり直しのチャンスを辞退したのだ。
そんなツナをしばしジッと見た後、初代はふむと頷いて言った。
「なるほど。アルコバレーノ達がした仕打ちは、そなたに深い傷を与えてしまったようだな。」
「否定はしません、初代。ですから俺はこのまま・・・・・・・・・・・・。」
「ならば、前世の記憶は全て真っ新にしよう。その方が、お前も新しい生を歩みやすくなるだろう。」
「は?え・・と・・・・初代?」
「生まれ変わる際に、前の記憶を持ったままでは歪んでしまいかねん。そういう意味でも、生前のそなたの記憶は封じ込めた方がよさそうだな。」
「なっ!」
そんな初代の言葉を聞いた瞬間、ツナは絶句した。
端から自分には、選択というものがなかったのだと知って。
はじめから初代は、自分を生まれ変わらせるつもりでいた。
自分をここへ呼び出したのは、ただその事を告げるだめ。
それを知ったツナに、かつての恐怖と絶望がよみがえる。
あんな悪夢のような体験を、もう一度自分は繰り返してしまうのか?
あんな苦しみと絶望を、もう一度味合わなければならないのか?
いくらそうならないようにやり直せるかもしれないと言っても、同じ悪夢を体験してしまう可能性だってあるのだ。
ならば、そんな可能性がある生など歩みたくはない。
生まれ変わらなくてもいいから、このまま消え去ってしまいたい。
あの悪夢としか言いようのない体験を繰り返す可能性がある生と消滅なら、迷うことなくツナはこのまま消滅していく方を選ぶ!
けれど初代は、ツナに消滅する事を許してはくれないらしい。
ツナは、自分の意識が急速を薄らいでいくのを感じて必死で初代に呼びかけた。