人々が創造せし大空の物語

□大空の守り人達(本編)
3ページ/287ページ



「デーチモよ。今一度新しき生を歩むのだ。」


そんな声と共に意識をハッキリとさせていったツナは、自分の前に佇む初代を見て目をパチクリさせた。


「えっと・・・初代?」

「うむ。目が覚めたようだな。デーチモよ。」

「あれ?なんで俺が初代と・・・。」


ボンゴレリングは、リボーンによって奪われ美々に渡されてしまったはずだ。
ボンゴレリングがなければ、リングの中に宿る初代とも意思疎通など出来ぬはず。
そう思ったツナに、初代は微笑みながら言った。


「ここは生と死の狭間。ゆえに一度は死したそなたとこうして会話する事も可能なのだ。」

「生と死の狭間?・・・・・・・・・・・・・・・・・・っつ!」


その瞬間、ツナは思い出した。

美々に嵌められてから誰にも信じてもらえず話すらも聞いてもらえず、最後には自分を取り巻く全てに絶望し、リボーンが自分から目を離した隙を見て並中の屋上から飛び降り、命を絶ったのだということを。


「あ・・・俺・・は・・・・・・。」

「どうやらその様子だと、思い出したようだな。デーチモよ。あの後、あの小娘の偽りは崩れ去りそなたの無実はアルコバレーノ達もボンゴレも知る所となった。」

「俺の無実を・・・知った?」

「そうだ。だがその時すでにお前は死んでおり、ボンゴレは次代の後継者を失ってしまった。その結果、内部分裂が起こり、更にはボンゴレの権威ですら失墜して滅んでしまったのだ。」

「そう・・・なんですか?」

「そうだ。」

「それで・・・リボーン達は何か俺に言っていましたか?」

「アルコバレーノ達のことか?いや、特にこれと言った事は言っていなかったな。それよりもそなたを陥れた小娘を罵倒し制裁を加える事に意識を向けていたぞ。それに何よりもすでにあの時お前は死んでいた。だから死んだお前よりも生きているこの小娘に怒りと憎悪を向けていたようだな。」

「それって・・・・。」


それを聞いたツナは、思わず絶句した。
自分の無実をリボーン達が知ったのはいい。
自分達を騙していた美々にその怒りを向けるのも・・・まぁ気持ちは分からなくもないから、この際横に置いておく事にしよう。
だが・・・。


「リボーン達は…本当に何も俺に言っていなかったのですか?」

「お前が無実だった事には驚いていたが、その直後に小娘へ怒りを向けていたからな。中には、その事実が中々受け入れられずに現実逃避に走っていた者もいたようだが。」

「そんな・・・・。」


それではリボーン達は、ツナの無実を知ってもツナに対して一言の謝罪も口にしなかったということだ。
ツナにした事に対して罪悪感を抱く事も、悪い事をしてしまったと思う事よりも、自分達を騙していた美々に対する怒りを優先させた。
つまりは、そういうことなのだ。


「俺って…俺って一体なんだったんだ。リボーン達にとって、俺の存在ってなんだったんだろう。」


ツナの目から涙が零れ落ちる。
自分の死を悼んでくれるわけでもなく、無実だった自分にあれだけの事をしたのに後悔するしてくれるわけでもなく・・・。
リボーン達にとって自分とはその程度の存在だったのかと思って、ツナはただひたすら涙を流した。

そんなツナに、初代は言う。




   
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ