過去拍手文
□自転車
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「お前って自転車とか乗れるんだな、坊ちゃん育ちだからてっきり乗れな「…乗れますよ!!自転車くらい!」
俺を高野さんに有無も言わせぬままきっぱりと言い切った
…こいつ、絶対、俺を自転車も乗れないような運動音痴だと思っているに違いない…そうに決まってる!
帰宅後、図書館で借りっ放しになっていた本を返す事を思い出した俺は時間短縮のため、滅多に使わない自転車を引っ張り出してよく通っている図書館に出掛けた
その帰り道、不本意にもばったりとこの隣人兼横暴上司に出くわしてしまったのだった
図書館からの帰り道、俺はキィキィいう自転車を引きながら高野さんと2人きり、沈黙したまま閑静な住宅街を並んで歩いていた
…何故こうも行動パターンが似ているんだろう…前もあったよな本返す時…
そういえばあの時は迷惑かけたんだっけ、怪我の手当してもらって…てかあれは元を正せば高野さんが…!!
恥ずかしい出来事を思い出してしまいぐるぐると思考回路を迷わせいたたまれなくなり俺は口を開いた
「…あの、俺自転車なんで先に乗って帰り「お前だけずるいな自転車乗って先かえんの、せっかくだし俺も乗せろ」
「……は?」
一瞬自転車に自分も乗せろと言ったような気がしたがきっと気のせいだろう…
「…じゃあ俺は先に帰りま」
自転車のサドルに跨がってペダルを踏み込んで漕ごうとすると突然、後ろから車体を引っ張る強い力によって自転車は全く動かなくなった
恐る恐る後ろを振り向けば案の定、いつもの涼しげな表情で瞳を光らせ俺の自転車の後ろ側を掴んで進むことを阻止している高野さんがいる
「あんた何やってんですか!!」
「なんでって、乗せろっつったろ?」
「な…これ俺の自転車ですよ!?」
「誰も俺1人で乗るなんて言ってねーだろ」
「…あんたもしや…」
嫌な予感しかしない…
しれっとした涼しい顔をして高野さんは俺から自転車をふんだくった
「…何いってんですか大の大人が2人乗りなんて!だ、第一この自転車後ろに乗るとこありませんし!」
「こうやったら乗れるだろ」
高野さんは俺を引っ張って無理やりサドルに座らせた
そしてサドルに座った俺の前に立ちはだかると、自転車のハンドルを握りペダルに足を置き、立ち漕ぎの状態で自転車を走らせたのだった