退屈。

□05
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生徒に手をあげる新任教師、鷹岡は渚との勝負に負けると逆上し、襲いかかろうとするものの、鷹岡は仰向けに転倒した。烏丸が防ぐ前に全理が鷹岡の腹に回し蹴りを入れたのだ。
目に見えぬ速さでのことで、鷹岡も烏丸たちも、何が起こったのか把握できていない。

『見苦しい』

その一言で鷹岡の体から冷や汗が溢れた。遥か高みから見下ろされているような、弱肉強食の世界に放り出されたような感覚に陥った。

『お前たちは勘違いをしている。ここは私立学校で、お前たち政府はこの学校に協力してもらっているに過ぎない。たかだか体育教師に任命されたからと言って、生徒が無条件で従う義理はない』

あまりの鷹岡の傍若無人ぶりに、全理も腸が煮えくり返っているのは、いつもの無表情が怒りに染まっていることから見て取れる。

『ここでの教師の決定権は理事長にある。そのことを忘れるな。ボンクラなその脳に刻み込め。
ここに、ただの大人は必要ない』

ポケットから取り出した1枚の紙。
鷹岡に見えるようかがけたそれは、解雇通知書だった。

『理事長から正式に預かってきた。
暴力でしか恐怖を与えることができない貴様はこれをもって解任だそうだ』

全理の言葉が終わると同時に鷹岡は怒りに任せてタックルを仕掛けてきた。
烏丸が庇おうとするも、全理の視線がそれを止めた。
通知書を宙に投げると、それごと鷹岡の顔に蹴りを入れた。

『これ以上駄々をこねるなら、それ相応の覚悟を持つことだ』

淡々とした物言いに、呼吸が止まりそうなほどの殺意が込められている。
安易に「殺す」と言わないのは、ここが"暗殺教室"だからだろうか。
顔に叩きつけられた通知書を悔しさからもしゃもしゃと食べてしまった鷹岡は、荷物を手に坂をかけ上がって行った。

「浅野くん…」
「いやあ、お見事です全理くん。先にあの理事長から解雇通知をもらっておくとは」
『…今回のことは貸しにしておきます。
あと、理事長が良い人だから助けた、という考えがあるなら間違いだ。あの人は今回のことで、絶対的支配者であると見せつけているに過ぎない』
「ヌルフフフ、そうですねえ」

たとえE組を落とす願ったりな教師だとしても、自身のビジョンに忠実である理事長はそれでさえも切り落とす。
ブレのない教育論だと全理は思った。

「ヌルフフフ…ブレないといえば、君も何かブレないものを持っていそうですけどねえ」
『………』

にやにやと笑う殺せんせーに、なんの感情もない瞳で一瞥した全理は無言でその場を立ち去った。



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