「オルフェウスなんて、ロマンチックなチーム名だね」
「ロマンチック?」
オルフェウス。
彼は最愛の死んだ妻、エウリディケのために冥界に向かった。竪琴音だけを持ち、愛する妻だけを求め。
「フィディオがオルフェウスで、私がエウリディケだったらどうする?」
「毒蛇は近寄らせない」
「えー、そうじゃなくて。冥界に迎えに来てくれないの?」
「ペルセペネやケルベロスを魅了する音楽の腕はないだろうし、渡し守のカローンすら許してくれないよ」
「酷い、諦めるの?」
そう彼女が不満げに頬を膨らませると、フィディオは苦笑して肩をすくめた。
「あいにくカローンが受け入れるコインもケルベロスが気にいるビスケットも無いし、仕方ないだろ」
「ちょっと、違う話しが混じってる。それプシュケ…―」
「だから一緒に死ぬよ」
「……え」
「君の居ない地上なんて意味がないから、すぐに冥界に向かうよ。冥界ででも一緒に居れるならそこが楽園さ。だから、毒蛇に噛まれようと首をかっ切ろうと君を追う」
そう微笑んだフィディオの顔をしばらく見つめる。その瞳はどこまでも真剣で、今彼女が死んでしまったなら本当に彼も死を選ぶだろう。容易に想像できた。
「……愛が重たい」
「軽いよりいいだろ?ロマンチックで」
そうフィディオは笑って彼女に軽くキスを送った。
ああ、早死には出来ないな。
エウリディケのために
(毒蛇に噛まれないように、どこかにしまってしまうのがいいかな?)(噛まれない、噛まれない)
END
―――――――
狂愛にしては甘い溺愛。