パンドラ
□独占欲
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≪独占欲≫
「ギルは俺が死んだらどうする?」
「は?」
パンドラ内のブレイクの部屋で俺とギルはお茶をしていた。最近は俺の中にジャックべザリウスがいることが発覚して以来、護衛が四六時中周囲を見張りギルと会うことができなかったが、ブレイクやシャロンちゃんの計らいでやっと二人きりになれることができた。
「いきなりどうしたんだ一体・・・」
呆れたように、なかば怒っているように言うギルに自然に口元がにやける。ギルが怒っていることに喜ぶなんて本当にどうかしてる。
「べつに?ただ気になってさ」
お茶をすすりながら口元をごまかし、何の気なしに言う俺に、ギルの眉間に深い皺が刻まれる。
「ギルは俺が死んでも俺の従者でいてくれるのかなーって思ってさ」
「・・・オズ」
ギルは椅子から立ち上がると、向いに座っていた俺に歩いて近づき、すぐ真横に立った。ギルは身長が高いため、少し威圧感がある。
「何?」
ギルの方を見ずに突き放すようにただ尋ねる。横目でギルが困っているのがわかっているが、どうしてもやめられない。ギルは優しいから、いつもそんな俺に付き合ってくれる。見捨てないでいてくれる。そんなギルに俺はすごく救われているんだと思う。子どもっぽいことだとわかっているけどギルだから甘えてしまうのだ。そんなことを考えていると、頭に大きな温かい感触が広がった。
「ギル・・・?」
「お前はなんでも背負い込み過ぎだ」
自分の頭の手の主をみると、そこには優しく微笑むギルの姿があった。
「辛くなったらいつでも頼っていいんだ」
そう言うと、両手が頭から移動して、体を強く抱きしめられる。
「な?」
「・・・うん」
ギルの体温と煙草の香りが鼻を霞む。他の人だったら嫌な煙草の匂いもギルの匂いだと思うと嫌じゃないから不思議だ。
ギルはいつも俺が不安がったり、構ってほしいときは抱きしめてくれる。以前に自分からせがんで、抱きしめてくれたことをきっかけに二人きりの時のみ抱きしめてくれるようになった。全く、どちらが主導権を握っているのかわかりやしない。
何も言わずにしばらく二人で抱き合っていると何の前触れもなく入り口の扉が開いた。
扉から入ってきたのはブレイクだった。俺たちを見ると、ほんの一瞬硬直する。ギルは後ろ向きに立っているのでブレイクの様子は見えていない。
俺はブレイクに人差し指を口元に持っていき、静かにしてというポーズを取るとより一層ギルを抱きしめた。
その様子にブレイクはあきれ顔を見せる。すると、気を使ってか、呆れてかはわからないが、そっと扉を閉めてくれた。
「ギル」
「ん?」
ブレイクが完全に去ったのを確認すると、ギルにまわしていた手を離し、胸元の襟をつかんで上目づかいでギルを見る。
「な・・・なんだ?」
ギルはこの体勢に弱い。上目づかいをするとわかりやすいぐらいに頬が赤くなる。気づかれないように小さく笑うと、日ごろの感謝をこめて笑顔で言った。
「ありがとう」
あとがき
オズがちょっと腹黒いです。最後はギルに感謝って感じです。駄文ですいません