ハンター
□映画
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≪映画≫
「キルア映画見に行かない?」
「映画?」
キルアと呼ばれた男は、目線を窓から移すと後ろにいる男に振り返った。
窓の外には小雨が降りしきり、暗い曇天の空のもと、人々が傘を差し足早に歩いている。
「うん、久しぶりにどうかなって思って」
椅子に逆向きにまたがり、両手を椅子の背もたれに置く男が言った。後ろの机には二人で食べるのであろうお菓子が山積みにされている。
「映画ねぇー」
キルアは窓際の腰かけていたベットに倒れこむと、片手を額に当て、難しい顔で黙り込んだ。
「やっぱり嫌だった?」
不安そうに眉根を下げる男に、
「いや、いやじゃないんだけど」
「嫌じゃないんだけど?」
オウム返しで聞くと、キルアはベットから立ち上がり男と向き合い、言った。
「この雨じゃあ行くのも大変だなって思ってさ」
「あー、確かに」
外には今だに雨が降りしきり、やむ気配はない。男は残念そうに逆向きに座っていた椅子を元通りに座り直すと、キルアに背を向けてテーブルに置かれていたリモコンを取り、電源を入れた。
「あ」
男はテレビの画面にくぎ付けになった。画面にはCMが流れ、しばらくすると火曜劇場のテロップが流れ始めた。画面に女優と俳優のラブシーンが映し出される。
「これで外に行かないで映画を見られるね」
嬉しそうに言う男に、
「ああそうだな」
キルアが頷いた。
すると男が椅子から立ち上がり、3歩ほどでベットに到着するとキルアの隣に腰かけた。
「また今度晴れの日に行こうな」
「うん」
微笑みながら言うキルアに、男も笑顔で返す。二人は片手の小指同士を絡めると、指切りをした。
映画を観終わる頃には雨は上がり、雨上がりの空が真っ青な色と共に姿を現していた。
あとがき
本当は二人で映画デートを書こうと思ったんですが、キルアは雨の日であるかなそうだなと思って変更しちゃいました。