ハンター

□散歩
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≪散歩≫



「キルア散歩しよ!」
 日差しが強くなる午後二時、ちょうど昼食を食べ終わり食器を片づけていると、ゴンからそんなお誘いがかかった。

「嫌だよめんどいし」
食器を台所に持って行きながらぞんざいにこたえる。連日連夜、ゴンと共に金稼ぎをして疲れているのが本音だった。むしろなぜそんな体力があるのかと問いただしたいくらいだ。

「えーいいじゃん行こうよ―」
 皿洗いをしていると、背中越しに抱きしめられた。あったかいぬくもりが冬の季節には心地いい。でもこんなことでほだされる自分じゃない。意を決してもう一度断ろうと振り向くと、威圧感のある笑顔で俺を見つめるゴンがいた。

「・・・・」
「ね?」
 無言の圧力に後参し、なにも言わず頷く。俺はこういうのに本当に弱い。計算でやっているのかやっていないのかわからないのも尚更たちが悪い。




「いい天気だね―」
「そうだなー」
 皿洗いを終え、外着に着替えてゴンと共に外に出た。冬独特の澄んだ空気が肺いっぱいに広がり、すがすがしい気分になる。雨が降った後なのか、路面が少し水で濡れていた。たまにはこんな風に外に出るのもいいものだな、と考えていると、甘い匂いが鼻をかすめる。見ると、だいぶ遠くにタイ焼き屋の屋台が見えた。

「ついでだし買ってくか」
「いいの?」
 窺うように見つめてくるゴンに俺はうなずく。自分でも甘いと思うが、かわいいものはかわいい。つい甘やかしてしまうのだ。その言葉にゴンは花が咲いたように笑顔になると、つられてこちらも笑顔になる。こういう何気ないことに俺は何度も救われた気がする。財布をゴンに手渡すと、

「ベンチで座ってて」
 はしゃぐ犬のようにタイ焼き屋の屋台に向かって駆け出して行った。

「元気だな、あいつ」
 呆れ半分、関心半分でつぶやく。赤い二人掛けベンチに腰掛け、空を見上げる。空には遠くの方に灰色の雲が広がり、俺達のいるところには風で飛ばされたのか雲ひとつない晴天が広がっていた。

「おまたせキルア」
 しばらくすると、ゴンが駆け足でタイ焼きの袋を抱えて帰ってきた。元気よく手渡されたタイ焼きを礼を言って受け取る。焼き立てなのかほんのりと温かかった。一口齧ると甘いあんこの甘みが口いっぱいに広がる。

「おいしいね」
「うまいな」
 素直な感想を言う。最近はスナック菓子やチョコレートばかり食べていたので、タイ焼きがとても新鮮に思えた。

「キルアあれっ!」
「え?」
 もくもくとタイ焼きを減らしていると、ゴンが川辺の方を指さした。指差す先を目線で追うと、そこには大きな虹が一つ川をまたいでかかっていた。珍しい光景に少し目を見開く。

「きれいだね―」
「そうだな」
 しばらく共に虹を眺める。七色の虹が太陽の光に反射して光り輝いていた。ふと、こんなことを思った。

「今日、ゴンが誘ってくれなかったら虹もみれずに一日を過ごしてたかもしれないな・・・」
「え?」
 タイ焼きを食べながら虹を見ていたゴンがキョトンとした顔でこちらに振り向く。

「ゴンは幸運の女神だな」
「・・・ありがとう」
 ここで失笑されたりしたら二度と立ち直れなかったが、純粋に受け止めてくれたのか、ほほを染めて礼をいってくれた。普段ならこんなことは口が裂けても言わないのに、言ってしまったのは虹の魔力だろうか。

 心の中で虹にゴンの幸せを願った。



あとがき
 はずい小説ですいません・・・。


 

 

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