マギ
□戦い
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≪絆≫
「シンドリアの国王シンドバッド!?」
「正しい反応をありがとう・・・」
「シン・・・」
驚くサクヤに、シンドバッドは服の袖で涙を拭いた。その姿にジャーファルが肩に手を置いて慰める。
「ところで、貴方の名前をまだ聞いていないのだが」
「私はサクヤと言います。こちらはレン。レン、挨拶しなさい」
「・・・なにか来る」
「え?」
サクヤが挨拶するように促すと、レンが窓の外を見てつぶやいた。部屋にいる者の視線が自然と外に集まる。
「なんだあれは・・・」
「人っすね」
「人!?」
ジャーファルが驚きの声をあげると、それは家々の屋根を伝ってゆっくりと、だが確実にホテルに近づいてきていた。
「モルジアナ!?」
シンドバッドが叫ぶと、赤い髪をなびかせてモルジアナが黄色い髪の男を抱えて隣の部屋に飛び込んだ。軽い衝突音と何かに激突する音がホテルの分厚い壁からかすかに聞こえてくる。
「あの方は誰なんですか?」
「私たちの仲間のモルジアナです。しかし、なぜ霧の団の首領なんかも一緒に・・・」
悩むジャーファルを余所に、シンドバッドが、
「まぁ、何か理由があるんだろう。ここはひとまず」
「ひとまず?」
「盗聴といこうじゃないか!」
「はぁっ?!」
堂々と犯罪宣言をした。その宣言にジャーファルが素っ頓狂な声を上げる。
「なっ何言ってるんですか?!ここは隣の部屋に行って首領を捕まえましょう。絶好のチャンスじゃないですかっ」
「いや・・・ここで俺達が出ていけば、霧の団の目的がわからない。多分彼女はアリババ君をアラジンと話をさせるために連れてきたんだろう。霧の団の真意を聞けるいい機会だ」
そう言ってシンドバッドは近くにあったコップを一つ取り、隣の壁に当てて聞き耳を立て始めた。
上司の言うことには逆らえないのか、または興味があったのかはわからないがジャーファルも同じように聞き耳を立て始める。
しばらく壁に耳を当てる男が二人。それを見守る3人という奇妙な構図が展開されたが、思わぬ形でそれは破られることになった。
「な、なんだぁ。上からでかい音が・・・」
今までずっと聞き耳を立てていたシンドバッドが突如壁から耳を離した。その様子に、レンとサクヤが顔を見合わせる。
「どうしたんでしょう?」
「なにか落ちたのか?・・・サクヤ!!」
ガシャーン!!
レンがサクヤを抱えて後ろに飛んだ瞬間に、サクヤのいた場所が破壊された壁の瓦礫で埋まった。開いた壁から柄の悪い集団が部屋の中に入ってくる。