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□会長受け
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「会長…、申し訳ありません」

それは唐突な謝罪。
俺は何故目の前の彼が頭を下げているのか思考を巡らせた。

しかしその思考はどの結果にも行き着かず頭の上に?が並んだ。


「何に対してだ?」

目の前の彼、生徒会副会長の夢野は意を決したようにわずかに強張った顔を上げて真っ直ぐに俺を見つめた。



「私が、副総長だってことは知ってますよね?」

その問いかけに無言で頷く。
平日には学校の敷地から出られないこの学園は土日などの休日の規制は緩く、街に出掛ける生徒が多い。
その中でぽつぽつと街の族に入り喧嘩に勤しむ者もいる。

普段規制の厳しいぶん、休日で弾けてしまうのは若さ故であろう。

しかしこの学園の生徒会長である俺、梁川 帆成(やながわ はんな)は休日はだらだらと寝て過ごす(街に行くのはめんどくさいし疲れる。)し喧嘩はやろうと思ったこともない(理由は同じ。)し族とは全くの無関係無関心である。

なぜここで夢野が副総長をつとめる族の話がでるのか?
後に続けた夢野の話を簡単にまとめると



夢野の族のメンバーはうちの学園の生徒が多くいるグループだそうで、

夢野はそこの副長をやっていて

夢野を含む学園の生徒のメンバーで雑談していて俺の話が持ち上がったらしい。
そこにやってきた夢野の族の総長さんが話を聞き俺に興味を持った、と。

「…それで?」 
「それだけですが?」

俺は生徒会室の自分の席に着いたまま机越しに真っ正面に立つ夢野を見上げた。

それがどうした。

たかがそれくらいでおれにどうしろと?

夢野の言いたいことがわからず首を傾げた。

俺の頭上には相変わらずの?が並んでいる。

「はぁ」

ため息が一つ吐いて出た。

「うちの総長、かなりの変態なんです。気をつけてください。」

いまいち話が飲み込めない俺は曖昧に夢野に頷いた。

この数時間後、夢野の謝罪と忠告の意味を理解したのだった。





それはそれは嵐のような奴だった。
街の公立高校の生徒であるという総長はとても…変態だったのだ。
見た目に反して。

夢野の忠告を聞き流したあと放課後の生徒会仕事を片付け終わり寮へ向かう途中のこと。
(ちなみに校舎から寮まであるいて10分弱はかかる)


「はーんなちゃん!!」
前からやってきたのは

「会長、さっそくすいません」

横を歩く夢野のグループの総長でした。

俺の前に立ち止まって顔をのぞき込まれた。 
そこそこ身長のある俺を見下すとは…総長は相当背が高いらしい。

じろじろと探るような目を前に俺も負けじと相手を観察してみた。

さらさらな明るいブラウンで襟足が跳ねた今時らしい髪に
真っ黒なわずかにつり気味の目
しかしその目にきつい印象は受けない

「わぁーはんなちゃん美人さんだ!!
あいつらがあんだけ綺麗だの言うから期待してたけどそれ以上ー」

彼の言うあいつらとは先ほどの夢野の話にでてきた学園の生徒のメンバーなのだろうか。

俺が美人?綺麗?それより…

「総長っつぅからもっと厳つい奴かと思ってた。お前の方こそ綺麗な顔してんじゃねぇか。」



間。


あれ、なんか俺したか?

実際本当に綺麗だったのだ。
髪やら服やらは確かに不良らしくだらしないが顔は整っている。
顔で人を判断するこの学園でも十二分にやっていけるだろうほどに。

「かーっ!!今のかわいい!!え、なに食べたい」
「同感で…じゃなかった、総長!!なにいってんですか!!
て言うか会長、危機感無さ過ぎです!!そんなきょとんとしたかお…!
そんな事したらぱくっと食われちゃいますよ!!」

う、なんだこいつら…

なぜか説教をはじめそうな夢野の雰囲気に一歩後ずさる。

その時、腕が横にひっぱられた。

「はんなちゃん、借りてくね!
あと学校入んのに門ぶっ壊しちゃったから修理よろしく〜」

ひっぱられるままに前を見ると明るいブラウンが、後ろには立ち尽くす夢野がいた。
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