RE-TURN
□デートしようよ!
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* * *(銀時視点)
ソファに寝っ転がり、片手にジャンプを持ったまま目を閉じる。
ただそれだけで、あの頃を思い出せるようになったのはいつからだっただろうか。
ああ、美桜が帰ってきてからだ。
なんて想い出に浸っていたら、いきなり窓が開け放たれた。
ここは二階で窓は絶壁。
「お父さん、そんな泥棒みたいな訪問」
「誰が泥棒で、誰がお父さんだコノヤロー」
何かで頭を殴られたかと思ったら、それは先ほどまで手元にあったジャンプだ。
そして、それをもってニヤニヤ笑っているのは、戦争以来久方ぶりに帰ってきた塾仲間で、新八の家に住み着いている食客だ。
何処へ行っていたかと思ったら、快援隊の船で宙だとよ。
そりゃ、探しても見つからねーわけだ。
万事屋なんてもんを生業にしてると、いろんなことが勝手に耳に入ってくる。
だけど、こいつの消息だけはようとしてしれなくて。
だが、くたばっちまったなんて信じられなくて(俺とヅラ、高杉と互角に渡り合えるような女だ)、だらだらと続けていた。
「んで、今日は」
「デートしよう」
「おまえは人の話は最後まで」
「スクーターで連れて行ってほしいところがあるの。
だから、デートしよう」
問答無用ですか。
つか、セリフは最後まで言わせてほしいもんだぜ。
昔からこうと決めたら人の話は悉く無視する性格は変わりゃしねえ。
「やだよ。
オメー、まだ選んでないんだろ。
中途半端なコトされたら、銀さん期待しちゃうよ」
もう一度ソファに寝転がろうとしたら、思いっきり腕を引っ張られた。
強制ですか。
「構わないよ」
その上、あっさりと肯定しやがられたら、襲うに襲えないじゃないですか。
「こんな小悪魔に育てた覚えはないんだがなァ」
「私が銀ちゃんに教わったのは、剣と真っ直ぐに向き合う心だけだったよ」
人の腕を引っ張りながら、ニィィと口の両端をつり上げて笑う様子は悪ガキで、たしかにその笑い方は俺たちを模したものだろう。
懐かしさと愛しさに引っ張られるように美桜の腕を引き、その肩を抱く。
が、意味は通じないらしく、美桜の方でも肩を組んできた。
「これデートと違わねー?」
「いーのいーの。
深いことは気にしたら負けだよ。
あっはっはっ」
快援隊にいたせいで妙な口癖まで移されて来やがった。
まあね、こいつのことだから、気が合うだろうなとは思ってたし、まっさきにいるだろうと思ったぜ。
だけど、辰馬は何もいわねーし、こいつはこれでもちっと人見知りなところもあるし(いや、マジで)、まさかなぁなんて考えてたわけよ。
玄関を出て、階段を下りて、美桜にメットをかぶせてスクーターのエンジンをかける。
「ほれ、早く乗れ」
「何処に行くの?」
「おめーが乗せろっつったんだろ」
「あーはいはい」
ポケットから何かを取り出し、俺の口に放り込む。
それは、甘い甘い金平糖。
「って、んなもんで誤魔化されるかっ」
「じゃあ、とりあえず真選組」
「帰れ」
なんで俺が真選組にわざわざこいつを届けなきゃならねぇんだ。
「デートは二人でするもんじゃねーの」
「土方の居ない今がチャンスなんだって。
協力してよ〜」
「なにやってやがんだ、オメーは」
「ええ?
隠密のアルバイト」
どう考えてもそれはアルバイトの範疇じゃない。
不安も手伝い、結局二人で真選組屯所と書かれた門の前に立っていた。
「ごめんくださーい。
局長はご在宅ですかぁ?」
「おいおい最近の隠密ってのは正面から堂々とお邪魔するんですか?」
「あははーそうだよー」
誰も出てこない屯所に遠慮無く美桜は入り込み、迷いなく奥へと庭を進んだ。
「世話になってたのは昔なんだよな?」
「もちろん。
今は妙さんのトコで」
歩きながら、短銃を取り出そうとする手を押さえる。
「こらこら隠密。
何ぶっそうなもん出そうとしてるの」
「物騒なんかじゃないよ。
これすっごい便利なの」
かしゃかしゃと銃身を何度も動かし、あれ?とか首を何度か傾げ、しまいには銃口を覗き込もうとする美桜から短銃を取り上げた。
「あ、何するのー」
「君が何するの。
銃口なんか覗き込んだら危ないって教わってないの」
「そうなの?」
「そうなのって……」
辰馬ー、持たせるならしっかり教えてから渡しやがれ。
「まあいいや。
近藤さん来てくれたみたいだしね」