B-girl
□04)校内案内
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(リョーマ視点)
自動販売機の場所を聞いていないことに気がついてすぐに戻ってきたら、すでにそこに晴樹の姿はない。
ーーこんなことだと思ったけど。
心の中で自分に言い訳して、先ほどまで晴樹の座っていた場所に座る。
吹いてくる風が心地良い。
目を閉じると、先ほどの晴樹の様子がはっきりと思い出せる。
木陰で寄りかかり、両手をスカートに落とし、柔らかくて温かくなる表情を浮かべて、この緑に解けこんでいて。
人間じゃないみたいで、すごく綺麗だった。
だから晴樹をみつけるのは簡単だったけど、反面むかついた。
だって、あまりに無防備過ぎだし。
あんな可愛い顔して寝てたら、襲われても文句言えないよ。
普段下から見上げている顔は、カッコイイという感じが強いけど、思ったとおり上から見下ろすと可愛い。
ついにやけちゃったけど、晴樹はきっと気がつかなかっただろう。
なにしろ超が幾つつくのかわからないぐらい鈍感なんだから。
閉じ込められるなら、閉じ込めてしまいたい。
でも晴樹の羽をもいでしまいたいわけじゃない。
掴んだ手首はとても細くて、やっぱり女だなって思った。
ふにゃふにゃして、柔らかいし。
けっこう強く掴んだつもりなんだけど、晴樹ってば全然痛がらない。
強がりもほどほどにしなよね。
先輩って呼ぶだけで、普段あまり変わらない表情が面白いように変化するし。
ただでさえ、普段と違う角度でみれる晴樹の顔をもっとよく見ようと、顔を近づけると、もっと慌ててて。
ーー面白い。
そのまま。
唇で触れてしまいたかった。
ここが学校でも、全然俺、構わないし。
むしろ、晴樹のまわりにいる虫を追い払うチャンスだったと思う。
でも、一筋縄じゃいかない。
「Ponta1本で、ごまかしやがって」
ずるいよ、晴樹。
俺がPonta好きになった理由も知らないで、ずるい。
全部、晴樹が好きだったからなのに。
だから、好きになったのに。
それで逃げるなんて。
ーー晴樹らしいっちゃらしいけどね。
風に吹かれて、晴樹の残り香が完全に無くなったところで、目を開く。
立って、そろそろテニスコートに向かわなきゃ。
テニスバッグを取りに、俺はその場を後にした。
今日の収穫はひとつ。
晴樹のお気に入りの場所を知ったこと。