物語
□ぎゅ〜っと
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「ふぅ」
私は碓氷の入れた紅茶を飲み、一息つく。
フローリングに座る私の隣りに碓氷も座る。
ソファーに座れよ…
「美咲ちゃんの隣りがいいのv」
「っお前、人の頭ん中を覗くな!!」
本当に宇宙人なんだな、こいつ…
「彼氏に向かってひどいな〜」
「っ〜!!お前は恥ずかしいことをさらっと言うな!!!」
赤くなっているだろう顔を向けて睨みつける。
「そんな顔で睨まれても恐くないよ!?むしろそそるv」
「あほかっ!!」といいながら、伸びてきた碓氷の手を払う。
「痛いよ、美咲ちゃん。暴力の直すんじゃなかったの?」
「うっ…お前が殴られるようなこと言わなきゃいいだろ!!」
「えー俺、別に殴られるようなこと言ってないと思うけど?真実を述べてるだけだよ、美咲ちゃんはかわいいとか、愛しい人とか、甘い時間とか…」
「っ…もういい!分かったから、黙れ」
こいつの変態ぶりには呆れるな…
恥ずかしさや怒りを落ち着けようと、紅茶に口づける。
「美味いな」
「そう?よかった」
微笑みながら碓氷も飲む。
そんな碓氷の様子にちょっと幸せになったが、それを認めたくなくて、思考回路を変えようと、私は部屋に来た時からの疑問を碓氷にぶつける。
「なぁ、私のクッションどこだ?」
碓氷の部屋に来るようになり、私専用のクッションを碓氷が買ってくれたのだ。
さわり心地も抱き心地もよいクッションは私のお気に入りで、いつも抱っこしながら過ごしていた。
「んー、隠したv」
「は?何で?」
意図が分からず首を傾げる。
「だって美咲ちゃんがあのクッションばっかり抱きしめるんだもん。妬いちゃったv」
「あ、あほかー!!!クッションに妬くなんて、お前どんだけ変態なんだよ!?」
恥ずかしさから怒鳴る。
「だから俺、独占欲強いって言ってるでしょ。鮎沢の抱っこを独り占めしてる、あいつが憎い」
「…」
こいつ、アホだろ…
呆れて何も言えないな
「ね、だから今日は俺をクッションだと思って抱きしめてよv」
「あ、アホか!!誰がやるか!」
再び熱を持ち始めた顔を背ける。
「えーいいじゃんvねぇ、ねぇ」といいながら服の袖を引っぱる碓氷。
駄々っ子か、こいつは…
徹底的に無視していたら、今度は泣き落としにかかってきた。
「美咲ちゃんは俺のことよりもクッションが好きなんだね…俺悲しい」「俺って愛されてないんだね」などと言い始める。
私はうんざりしながらも、結局碓氷の思うつぼになってしまうのだ。
これが惚れた弱みってやつかもな…
「っ!!あーもう、うるさい!分かったから、ぎゅっとすればいいんだろ?ほらやってやるから、背中をむけろ!!!」
「えー俺、向かい合ってのほうがいいv」
爽やかな笑みを浮かべる碓氷に、恥ずかしさが込み上げる。
「じゃあやらん!!」
「ちぇー、しょうがないな…妥協してあげる」と言いなから、私に背を向ける碓氷。私は膝立ちになる。
碓氷に背を向けられたらことが何となく寂しくなって、すぐさま碓氷の首に手を巻きつけ抱きしめる。
「…これでいいか?」
碓氷の耳元で小さく呟く。
「うん、ありがとう」
私の頭を撫でながら、満足そうな碓氷声が聞こえた。
いつもは抱きしめられてばかりだが、こういうのもたまには悪くないかもな…
ぎゅ〜っと碓氷を抱きしめながら、思った。
おまけ→