物語
□小さいの?
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「えっー、じゃあ俺の嫌いなとこやなおして欲しいところは?」
会長から指示されたコピーを終え、生徒会室に戻って来た書記の小杉と会計の沢、寒川の耳に飛び込んできた声は、ここ星華高校一のモテ男・碓氷拓海の声だった。
成績優秀・容姿端麗・スポーツ万能、欠点がおおよそ見つからない完璧な男である。
そんな彼が、鬼と恐れられる生徒会長・鮎沢美咲と付き合っていることがわかったのは最近の事である。
3人は扉を開けようとしていた手を引っこめる。
沢 どうする?このタイミングで入るのはマズイよな?
小杉 ああ、マズイ。でも、これ以上時間かけると帰りが遅いって怒られるかも…
寒川 とりあえず会長の答え聞いて、それから何事もなかったように入ろうよ。というか、ここでいちゃつくのやめて欲しいんですけどね。
3人は言葉を発さず、目で会話する。
美咲と碓氷が付き合ってるという衝撃の事実が発覚した後も、碓氷は生徒会室に入り浸り、美咲に絡んでいた。
美咲はどうにか追い出そうとするのだが、はたから見ている他の役員にはいちゃついているようにしか見えないのだ。
3人は苦笑いしながら、会長の答えを待つ。
「お前の嫌いなとこは、その余裕のあるところと、何でもできるところだろ、あと…「そんなにあるの?」
すこし悲しそうな声が碓氷聞こえる。
小杉 さすが会長、碓氷さんにあそこまで言えるか、普通?
沢 碓氷さんって会長のどこに惚れたのか、俺未だに分かんねー
寒川 確かにな。まあ、とりあえずこれで入れるだろ
扉を開けようと、寒川が再び扉に手をかけたところに美咲の声が聞こえてきた。
「なおして欲しいところっていうか、…が小さいところはどうにかして欲しいな」
寒川はピタリと動きを止め、あとの2人を振り返る。
沢 えっ…よく聞こえなかったけど、小さいって言ったよな?
小杉 ああ、言ったな…。でも男で大きさを論じるのは、アレしかないだろ…
寒川 いや、でもっ…
顔を赤らめながら3人は、視線を泳がせる。
「えー、俺大きいほうだと思うけど?」
とぼけた碓氷の声が聞こえてきた。
沢 う、碓氷さん!そりゃ碓氷さんは俺たちの希望でもあるので、そうであって欲しいっす!!
「いや、お前小さいって自分でも認めてただろ!?ガキみたいだよな。その時は分からなかったが、今はわかるぞ」
寒川 会長ー!!!ガ、ガキって言い過ぎですよ。好きな女の子にそんなこんと言われたら、男は立ち直れませんよ!!
小杉 えっ、今は分かるって、会長と碓氷さんは…いや、まぁ彼氏彼女ならな…。あれ!?でも会長は誰を基準に…?
沢 碓氷さんも認めてるって、まさか本当に小さいのか!?いや、でもそれはそれで俺らは勇気づけられるっす!!
顔色が青くなったり、赤くなったりの3人。
「そうだっけ?じゃあ鮎沢は今の大きさじゃ物足りないの?」
「いや…まぁ、もうちょっと大きいほうがいいかな」
小杉 か、会長ー!!!大胆なこと言いますね!
沢 いやでも、大きくする方法ってあるのか!?俺も知りてぇ
寒川 沢…お前…興奮しすぎて、ぶっちゃけすぎだぞ!?
小杉 でも、俺も知りたい
寒川 まぁ、俺もだけど。てか、碓氷さんも同志って嬉しいですね
沢・小杉 頑張りましょう、碓氷さん!!
生徒会室前で肩を組み、扉に向かって片手を挙げている男3人の光景はとても奇妙なものだった。
そんなところへ、生徒会で最も空気の読めない幸村がやってきた。
「何してるんですか、皆さん?肩組んで」
幸村は不思議そうな顔をしながら3人に声をかける。
沢 わっ、幸村!しーっ、静かに!!
慌てて幸村を注意する。
「どうしたんですか?というか入りましょうよ」
幸村は小声で言いながら扉に手をかけた。
小杉 わっ、馬鹿!止めろ
小杉が止めるのも間に合わず、幸村はガラガラと扉を開けてしまった。