物語
□救急の日
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9月9日、今日は救急の日だ。
星華高校の体育館には、各部の代表2名と生徒会役員、先生と数十名が集まって、応急救護処置についての説明と訓練が行われていた。
生徒会長である美咲はもちろん出席していた。
その隣には当然の様に碓氷がいた。
「おい、なんでお前までついて来るんだ!!」
説明があと少しで始まるため、美咲は小声で怒鳴る。
「えー、別にいいじゃん。こういうことは何回も訓練することで、いざその時に焦らずにできるものだと思うけど」
珍しくまともなことをいう碓氷に美咲は少し驚く。
「お前にそんな正常な思考回路があったとはな…」
少し感心していると、碓氷の次の言葉で取り消すことになる。
「えー?だって会長が倒れたとき他の奴に人工呼吸させたくないでしょ」
碓氷はにやりと口を歪めた。
呆れて何も言えない美咲に碓氷はさらに言った。
「それにいくら人形だからって、会長が俺以外の奴とキスするのは許せないし。俺、独占欲強いから」
碓氷は美咲の唇を指でなぞった。
「〜っ!?あ、あほかっ!!人工呼吸を変態思考で捉えるな!!」
美咲は真っ赤になって怒鳴った。
「は〜い、じゃあ今から応急救護処置について説明をしていきます。説明の後、実際に人形を使ってやってもらいますので、しっかり聞いてくださいね」
指導者が説明を始め、美咲は真剣に聞いた。
一通りの手順や方法が説明され、人形を使って実際にすることになった。
2人1組になって行うことになった。
「会長〜、俺と「幸村!!一緒にやるぞ」
美咲は碓氷から逃れようと幸村を誘う。
「えっ会長、僕でいいんですか?碓氷さんが…」
幸村は碓氷をうかがいながら、美咲に確認する。
「問題ない」
美咲はそう答えるが、幸村は納得いかないようで、
「僕は会長の足を引っ張っちゃうかもしれないので、会長は碓氷さんと組んだほうがいいと思いますよ」
と言った。
「ほら会長、幸村もこう言ってることだし、俺と組も?」
碓氷は有無を言わせず、美咲を引っ張って、人形の周りに移動する。
移動したところの人形では、男子2人組が人工呼吸をしようとしているところだった。
人形の口にフェイスシールド(人工呼吸用のマスクで、感染などから自分を守る目的がある)をあてがっている。
1人の男子が人形に息を吹き込むのだけれど、なかなか胸が上がらない。
「やっぱり、難しいんだな。今は人工呼吸は無理にしなくてよくなったことは知らなかったよ」
美咲は先ほどの説明で、人工呼吸は適当に行わなければ肺が傷ついてしまったり、タイムロスにつながるため技術がない人には無理に行う必要がないことを知った。
「会長もまだまだ完璧にできないだろうから、実際の現場ではしないほうがいいかもね。俺も許せないし」
「だから、お前は何でそれしか考えられないんだよ!!真面目にやれ!!つかフェイスシールドがあれば、直には触れないだろ?」
美咲は小声で怒鳴る。
「そうだけど、でもやっぱりイヤだ。あっ、もし会長が俺に人工呼吸をするときは、直にやってねv」
呆れた美咲は、心臓マッサージをしようとしているだんしに目を向けた。位置を確認している。
「乳頭を結んだ線の真ん中だったよね?鮎沢だとどの辺かなぁ」
碓氷は美咲の胸を見ながらにやりと笑う。
「お前はっ、まじでいい加減にしろ!!」
真っ赤になって怒鳴る美咲に碓氷はさらに言葉をかける。
「後で確認しようねv」
美咲の回し蹴りが炸裂した。
この後も変態宇宙人に散々邪魔された(結局人工呼吸は練習すらさせてもらえなかった)美咲は、後日自分で講習会を見つけ参加したのでした。
end