物語
□虫さされ?いえ、虫除けです。
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「……んっ…?」
チクッとした痛みに、美咲は浅い眠りから現実に引き戻された。
一瞬、自分がどこにいるのかわからなかったが、目の前にある資料を見て、生徒会室だと気づいた。
眠ってしまったのか…
どれくらい寝たのだろうかと
背後の時計を振り返えろうとすると
「おはよー、会長v」
そう言って、耳元にふっと息を吹きかけられる。
「っ〜、う、碓氷!!お前は、
本当に「会長、頼まれてたコピー終わりました」
ガラガラと扉が開くと同時に、幸村の陽気な声が美咲の言葉を遮った。
「ああ…ありがとう。…叶もな」
いえ、と幸村が持っていた倍以上の紙束を叶は机におく。
「あれ?会長、首のとこなんか赤くなってますよ?」
幸村は自分の首を指しながら、虫さされですか?と心配そうな顔をした。
「いや、かゆくはないが?赤くなってるのか?」
「はい。僕一応、かゆみ止めの薬持ってますけど」
ごそごそとバッグを漁る幸村の横で、叶はぼそりと呟いた。
「それって、さされたというより、吸われたんじゃ…」
「?まぁ、確かに蚊は血を吸うが、お前の家ではそういうのか…?」
美咲は叶の言葉の真意に気づかない。
「ああ、僕の両親は蚊にかまれたって言ったりもしますね」
幸村の言葉に碓氷はニヤリと笑って「噛む、ねぇ…」と呟いた。
虫さされ?いいえ、虫よけです。
end