指先が描くのは
□第1章 汝は我が剣となれ
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第1話
時計塔・召喚科講師のケイネス・エルメロイ・アーチボルトが日本の冬木市の聖杯戦争に参加する。
そんな噂が時計塔に流れていたある日のこと。
友人であるウェイバー・ベルベットが半ば朽ちかけた一反の布を持ってやってきた。
「それは?」
「驚くなよ?ケイネス先生宛ての征服王イスカンダルの聖遺物だ!」
管財課の手違いによりウェイバーの手元に届いたのはケイネス先生が聖杯戦争において使うはずだった聖遺物。
彼はそれを持って自らが聖杯戦争に参戦しようというのだ。
「…まあ生きて帰ってきてほしいな」
「当たり前だ!僕の才能を時計塔の奴らに知らしめるまでは死ぬもんか!」
そう豪語するが、目の前の彼―ウェイバー・ベルベットは魔術師としては平凡な才能の持ち主だ。
ただ、考え方や魔術の使い方は他の魔術師と全く違う。
それを理解し、受け入れなければ彼自身が成長することはない、と思う。
…とはいえ、私が言っても聞かないのだけど。
「聖杯戦争、か」
冬木へ行くための準備をしに早々に戻っていったウェイバーを見送り、私は呟いた。
聖杯と名のつく魔術礼装は非常に多いが、特に冬木の聖杯はいわくつきと聞いている。
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