野球しようよ―第1部―
□5章 飛べないアゲハチョウ
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ある夕方の河原の空き地に2人の女子高生がキャッチボールをしていた。
?「ねえ、あっちゃん。野球部入らないの?」
彼女たちは、千代田中学出身のB組の前田敦子とE組の峯岸みなみである。
前田「私はいつまでもサナギのまま飛べないチョウだよ…」
みなみから受けたボールを敦子はじっと見つめていた。
峯岸「中学の時の事を気にしてるんでしょ?だったら尚更じゃん!」
敦子とみなみは小学校時代にバッテリーを組んでいた仲だった。しかし、中学校では顧問の方針から野球部への入部を拒否されてしまっていた。
峯岸「あっちゃん!」
業を煮やしたみなみが大声で敦子の名前を呼んだ。
前田「うるさい!」
敦子の左腕から放たれたボールは真っすぐ、しかも力強くみなみのミットに吸い込まれた。
峯岸「ごめん…」
結局2人は野球部には入れなかったが、3年間毎日のキャッチボールだけは欠かさなかった。
前田「帰るよ。」
ボールの見え方が怪しくなってきた頃合いで2人は河原を去った。