lovesick


□第38話
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次は自分たちなのかという思いとナツの安否の心配からかハッピーの目に涙が浮かぶ。
しかしジェラールはハッピーたちに目を向けることなく背を向けた。

ミッドナイトに一瞥くれたが特に何か反応を示すこともない。
そのまま去るのだろうかと様子を伺った。

しかし、

ジェラールがある一点から目を逸らさずに立ち止まった。


「(そこに何が――――…あ。)」


ハッピーもジェラールの視線を辿りそちらを見る。
そこには冷たい岩の床に身体をぐたりと横たわらせ顔を苦しそうに歪めている少女――ミオがいた。


「(まさかジェラールもミオを…!)」


ハッピーの考えた展開をそのまま実行するかのようにジェラールはミオを大事そうに抱きかかえその場を後にした。

ハッピーは何も動くことができなかった自分に悔しそうに涙を流すだけだった。







あれだけ身体の中でざわめいていた魔力が少しずつ解れていくのを感じた。
そのおかげか気分の悪さは消えて、重い瞼をあける。

何度かまばたきを繰り返してぼやけていた視界の焦点を合わせてあたりを見渡す。


「ニルヴァーナもこの中に眠っている《魔力の墓場》も、そこにいる《魔力の泉》も誰の手にも渡してはいけない。」


とらえたのはいつか見た緋色と蒼。

すぐさま起き上がるべきだろうに、何かが消えていく感覚が心地よくてこのままずっと眠っていたいと思う。


「だから完全に破壊する。
自立崩壊魔法陣を既に組み込んだ。
ニルヴァーナもゼレフの最高傑作もまもなく自ら消滅するだろう。」


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