lovesick


□第36話
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身体中の血液が流れを止めたのかと思った。

脳が固まっているかのような感覚。


「ミオ…さん?」


私の体が冷たいのだろうか。ウェンディが私の手に自身の手をそっと重ねた。

じんわりと、人と人が触れ合う温かさがそこにある。少し荒くなった息が落ち着きを取り戻し始めた。

そうだ、固まっている場合じゃない。


「ありがとう、ウェンディ。」


ブレインの魔法のせいで少しくぐもった声になるが、それはしっかりとウェンディに伝わったようで、安心してくれた様子が見てとれた。

抵抗がなくなったのを感知してかブレインの魔法が少し緩まり呼吸器菅が楽になる。

新鮮な空気を肺にとおしてブレインのほうに視線を戻した。


「そう嫌悪感を顕にするな。
安心しろ、すぐに教えてやる。」

「やめて!」

「だから何をだって…!言ってんだよォ!!」


先ほどまで地に這いつくばっていたナツが立ち上がってブレインとの距離をつめた。

ほとんど不意打ちといってもいい行動だったにも関わらず、六魔将軍の誰一人として焦る様子の者はいない。

ナツの拳がブレインに当たるよりも速くレーサーがナツの前に立ちはだかり、その足で薙いだ。


「ナツ!!」

「お前たちの目的はなんだ!
我らを倒すことか!ここに眠っている《アレ》を見つけるためか!」

「ぐっ…!!」


レーサーがナツを嬲っている一方でブレインが意地の悪い笑みを浮かべ、愉快そうに話す。

核心を突かれたことにヒビキが呻いた。


「どちらにしてもこやつを使えば簡単だろう!!」

「………、どういう意味?」


ブレインが私に指を向けた。

皆の視線もその指の方向――つまり私に集まる。

ブレインの口が弧を描く。
他の六魔将軍が期待の眼を寄せる。
皆が私を見る。


「こやつがその片割れ………、」

「やめて!言うなっ、言わないで…!!」

体中使って巻き付いてるものから脱出しようと暴れた。しかしそんな私を嘲笑うかのごとくブレインは止まらない。


「《魔力の泉》なのだから!!」



ぷつり、と何かが切れる音がした。



「×××××っ…!!――っ××!!!」




そこからの記憶はない。




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