lovesick


□第36話
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「え、どっちって、……何が?」


途切れ途切れのルーシィの言葉は、静かなこの場ではよく響く。
言葉に混じって吐き出される吐息が彼女が負ったダメージを物語るようだった。


「なんだ、知らないのか。」

「ブレイン、まさか!!」


ブレインは私たちに巻き付けている煙を自身の方へ引きつけ、私の目を覗き込んだ。
その冷徹な瞳の色に私の身はすくむ。


「金色ではない……、ということは探していた方ではないか。しかし、嬉しい誤算だ。」

「だから!何だってんだ!!」


後ろでグレイが叫ぶ。

すごく遠くの音のように聞こえるそれはウェンディが腕の中でびくりと体をこわばらせているあたり、それなりに大きな声なのだろう。


「ギルドに入って隠れていたのか!灯台下暗し、やることが予想外!
束の間のお仲間ごっこはお気に召されたか?」

「違う!黙っ…―――――っ!!」


煙が私の口を覆った。
妙な圧迫感のせいで声がでない。
口だけでなくそれらは鼻まで塞ぎはじめて息苦しくなってきた。涙目になっているであろう瞳でブレインを睨む。


「うぬならこれくらい何ともないだろう?」


私が知るか。


「どうやら隠しておきたかったようだが、いつまでも隠しきれることでもあるまい。」

「てめえ!いい加減ミオとウェンディを離しやがれ!」

「私たちの仲間に何すんのよ!」


ナツとルーシィの声がぼんやりと聞こえる。力が入らなくて視界が霞む。酸素が足りない。

しかし、それら全てを吹き飛ばすようにブレインの口元がゆるく、いやらしく、怪しく、不吉に――弧を描いた。


「ミオというのかこやつは。
しかしうぬらはこやつの正体を知っても仲間だと思えるか…?」

「は……?」


こいつ、言う気だ。


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