lovesick
□第30話
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目の前をルーシィたちが通る。
ミラとエルフマンが通る。
パレードは一層の盛り上がりを見せたけれど、私たちはただ静かに会話する。
「お前は俺に言ったことを覚えてるか?
ギルドに求めるものってやつ。」
『結局さ。ラクサスがギルドに一番求めてるのって…何なの?』
「覚えてるよ。」
「お前は何て答える?」
私はギルドに何を求めているのか。
私がギルドに何を求めているのか。
これから話すことは独白に近い、どうでもいいことで、関係があるかも微妙な話なんだけど。
「私は家族のこと…結構好きだったんだよね。
尊敬もしてた。うちの両親それなりに有能な医者でさ。
ほとんど帰ってくるころ無かったんだ。すれ違いだったりとかね。
それで一緒に過ごす時間が短くなるんだけど、その唯一の時間でさえも私のことは『家族』じゃなくて『跡取り』として見るんだ。」
だから愛情というものがよくわからない。
愛してくれていたのかわからない。
「でもね。ここに来て…妖精の尻尾に来て自分の異常に気づいた。」
夢物語だと思っていた関係がここにあった。
自分がこんな関係を求めていたんだと初めて気づいた。
「知ってる?“いってらっしゃい”ってね、“ここに帰って来い”って意味なんだよ。
だから私は“ただいま”って帰ってくるんだ。
そしてそれを私からも言うんだ。」
ただの挨拶だと認識していた言葉が意味のあるものだと気づいた。
それを言われることの嬉しさを知った。
『おかえり、ラクサス。』
求めるだなんて大層なことではないけれど、今の状態が落ち着く。
「帰ってくる場所がある。
自分の居場所がある。
はしゃげる場所がある。
笑い会える場所がある。
それって私にとっては、とても凄いことなんだ。」
ラクサスは応えない。
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