lovesick
□第30話
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目が覚めて見えたのは木の天井だった。
最後に見えた澄んだ青空とは違い、窓の外には夜の帳が下りている。
大分時間がたったらしい。
「…ファンタジア、見れるかな…。」
ちらほらと街には灯りがついている。
その中で一際光を放っているのは大通りだ。
上を見れば花火が上がり、耳を澄ませば楽しげな音が聞こえてくる。
それに向かって歩いていくと見覚えのあるコートを羽織った金髪の青年がいた。
私は彼の隣に黙って並ぶ。
「お前…。」
金髪の青年もといラクサスは私の存在に気づいたらしい。
しかし私はそれに応えずパレードを見た。
ラクサスもパレードに目を戻したのが気配で分かる。
「…出ないのか。」
「生憎、さっき目が覚めたばかりでね。」
パレードを見ながら言葉を交わす。
にぎやかな音が目の前から出ているというのに、お互いの声は思いのほか響いた。
「…神鳴殿か。」
「私はアレ、壊してないけど。」
「知ってるさ。情報ボードにテメェの名前なんかでてきやしなかったんだ。
でもな、別のことで出てきたよ。」
「へぇ。何て?」
「“生体リンク魔法によるダメージの80%をミオが受け、それにより気絶”だそうだ。」
「…………」
「いじったのか?」
私は沈黙した。
バレていたとは思わなかった。そうだよね、あの情報ボード何でも出そうだもんね。
「…そうだね。」
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