lovesick


□第20話
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それが私が冒頭で投げかけた質問の答えだと理解する。

長い。

その次に様々な考えが頭をめぐる。

悪魔の島ガルナで氷が融けて水になったウルさん。言うなれば魔力の塊だ。

それが私の中に入ってきたということはつまり《還ってきた》ことになるのだろうか。

アリアの枯渇(ドレイン)を受けたとき私には何の変化も無かった。

それは私が《魔力の泉》という存在で、魔力が無くなることはないと、そういうことなのだろうか。

そんな思考の迷路から意識を浮上させたのは、鎖骨あたりに感じた小さな痛みだった。


「ジェラール…。質問だけどあなたは言い伝えの【身体を交えればたちまち力を得るだろう】を立証しようとしているのよね?
やめてほしい限りだけど。」

「ああ、そうだ。記憶力が良いな。」


ジェラールは再び膝立ちになって私を見下ろす。


「わかったからもう止めて。」

「それでオレが退くと思うか?お前もわかっているだろう。
自覚は成長するうえで一番重要なことだという。自分が《魔力の泉》と自覚したミオには魔力が人一倍感じられるはずだ。オレの魔力がどれだけ上がったのかもな。」


そう。人一倍かどうかは知らないが、確かに複数の魔力が近くにあるのをかんじる。

目の前のジェラールの魔力がどのように跳ね上がったのかも、嫌というほどわかった。

また一つ私は人間だと主張できるものが崩れ去っていく。



――私は、本当に人間ではないのか。


――ゼレフに創られた魔法(ばけもの)なのか




「なあミオ。こっち側に来いよ。
お前はゼレフに創られたんだ。本来立つべき位地が違うだろう?」


ゼレフは生きている、とか。

ジェラールに話しかけたゼレフはウルティアなんだ、とか。

このRシステムは無意味なんだ、とか。

先を知っている私には色々思うことはあったけれど。

例えそんなことを知らなくても私は同じ言葉を返すだろう。


「私は――…」





「妖精の尻尾の魔導士よ。」





ずっと一緒にいたいと思う人達がいるから。



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