lovesick
□第27話
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ふと耳に物騒な会話が聞こえた。
――おい……ガジル
――に――……来い。
この聞きなれた声はジェットとドロイの声だ。
そうして私は嫌な予感が当たっていないことを願いつつ、全速力で走っていた。
「ねえっ…!こんなのヤメようよぅ!!」
手当たり次第に走っていると、やはり聞きなれた声がする。
聴力が上がっているゆえに聞こえる声なだけで、それほど近くにいるわけではないのだろう。
私はまだ慣れていない、魔力を探知するという行為に専念した。
「ミオが何とも無かったようにしてるのに私たちがこんなことするなんておかしいよ!
助けてもらったからミオに謝ってもらいたいけどそこは話し合いで…!」
「(…私のためか。)」
みんなは私が全てを《知っている》と思っている。
みんなの中で、私が傷つくことは誰かを庇ったことだというのが最初に思うことのようだ。
「(あんな調子に乗ったこと言うんじゃなかった…!)」
こちらに来たばかりの私はなんて浅慮だったんだろう…!
――でも、あのときは
「これは何のイジメだ?あ?」
「(ラクサスが来た!)」
思考を中断し、速度を上げる。
曲がり角を一つ曲がってようやく姿が見える。
タイミングが良いのか悪いのかラクサスがレヴィに向けて雷を放ったところだった。
――あ、この構図はダメだ。
レヴィがいて(エルザがいて)
ガジルがそれを庇って(シモンがそれを庇って)
今にもラクサスの雷が(今にもアルテアリスが)
一瞬記憶がとんだ。
気づけば私はラクサスの雷を直に感じていた。
後ろを見れば驚いた顔のガジルとレヴィがいて、前を見れば眉間にしわを寄せたまま少し目を見開いたラクサスがいる。
「おかえり。ラクサス。」
「ああん?どけよ。」
ラクサスは今にも放たんとばかりに手に雷をためる。
私は先程の雷で少し痙攣する体を不自然の無いように動かした。
そう、今回は――《還して》ない。
「そいつはギルドの名を汚しやがったんだ。
…てめぇだって弱ェくせに何庇ってんだよ!!!」
「……結局さ。ラクサスが一番ギルドに求めてるのって…何なの?」
ラクサスは私のこの問いを鼻で笑った。
周りからは焦ったような驚いたような気配を感じる。
「決まってんだろ!強さだ!!
何者にも揺るがされない圧倒的な強さだよ!!」
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