lovesick
□第4話
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後でわかったこととして、フィオーレ王国は日本より遥かに重力が低いようだ。
だから、少しの力で物を破壊することもできるし、少しの力で屋根の上までとぶことができる。
体も丈夫で痛覚は低下しているらしい。
痛覚の低下はすなわち自分の体の限界がわかりにくくなることと同じで少し危ないが、怪我をするようなことに巻き込まれなければ大丈夫だろう。
なにはともあれきっとこれがこの国で私を守る唯一の武器になる。
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突然の出来事で呆然としていると、急に息苦しさにおそわれた。がくんっと膝がおれ床にへたりこむ。
息がうまく吸えない。
頭が朦朧とする。気分が悪い。気分が悪い。気分が悪い!!
「ちょっと大丈夫!?」
ルーシィの焦った顔が霞んで見える。
そこで私は意識を完全に手放した。
目を開けると、そこはギルドの一室だった。
しかし、やけにギルドが静かで私は不思議に思い部屋を出る。
皆、沈んだような顔をしていて、ただカウンターの上にあるビンの中にいるものがだせ、だせ、と声を上げている。
そして私は瞬時に悟った。
「ああ、エルザが連れて行かれたんだ。」
皆の顔が更に沈む。
どうやら正解のようだ。
「で、ナツはもう行っちゃったんだね。」
「え?ナツならそこにいるでしょう?」
ルーシィがビンを指差して私に言う。
「ていうかなんでエルザが連れていかれたのしってるの?
あんた眠ってたんじゃ。てかもう大丈夫なの?」
「ああ。それはもうおかげさまで。
ありがとう。 ・・・ていうか。」
私はいったん言葉を切り、つかつかとビンに寄る。
そして、ビンを軽く指ではじいた。
「もういいと思うよ。マカオさん。」
ビンはガチャンと音を立てて割れ、中にいたものは煙を出して本当の姿を現した。
「マカオ!!?」
「えーーーっ!!」
「すまねぇ。ナツには借りがあってよう。」
マカオが頭をかきながら気まずそうに言う。
「ナツに見せかけるために、自分でトカゲに変身したんだ。」
それから皆ナツの居場所を推測する。
マスターは静かに口を開いた。
「全員黙っておれ。静かに結果をまてばよい。」
非常に気まずい雰囲気になった。
私はこの思い雰囲気をなんとかしたかった。
大丈夫だと安心させたかった。
だから思わず口を開いてしまったのだ。
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