アスクレピオスを喰らう者

□03、本能
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 頭から滴る赫は、錆の臭いを通り越し生臭い。

 ノースブルーの気候のせいか、蒸気を上げていた内臓はもう冷たいどころか凍っている。

 床に転がる肉塊の一つ。血まみれの頭部に一つしか原型を留めていない瞳と目が合った。

 死んだ魚の目というのはこういうモノを言うのだろう。白く濁った汚い瞳に、何の感慨も感じなかった。

 初めて殺したのに、………何も感じない。


 あるのは悲しみと、――“始まり”への確信。





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