妄想話T&B(兎虎)

□光明
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 シン…と静まり返る薄暗い寝室。

 バーナビーは息苦しさにふと目を開けた。
 躰中が油汗にじっとりと濡れ、躰が勝手に小刻みに揺れ動くほどに心臓がバクバクと激しく鼓動を打っている。
 喉が異様に乾き、鉛の様に躰が重い。
 最低なコンディションに、バーナビーは眉を顰め喘ぐように悪態を吐いた。

「ハ…ァ…最悪だ…」

 バーナビーの二つの瞳は、仄暗い灰色の空間の中でも美しく輝き、まるで奈落の底に落ちて行く宝石のようだ。だが、生まれたままのその姿では満足な役割を果たさないそのエメラルドの瞳は、確かに有るはずの空間を曖昧なものに変貌させ、儘ならない己の躰と相俟って、心の中に巣くう仄暗い闇を更なる漆黒へと煽り立てる。

 闇とは…往々にして心安らかなる者には静寂と安寧を、心乱す者には更なる恐怖と不安を掻き立てる。

 頭の中で、何度も再生を繰り返すあの時の忌まわしき凄惨な記憶。禍々しい炎に包まれていく無惨に命を絶たれた最愛の父と母…そして……!





「ッ…」

 冷え切った躰。

 冷え切ったシーツ。

 冷え切った空気。

 あの時、凍りついたまま溶けない心…

 虚しいほどに広いベッドに独り横たわる己を、
幼子が視る夢物語のような闇の魔物が牙を向いてこちらをじっと凝視している。

(少しでも動いたら、きっとアレに呑み込まれてしまう!)

 滑稽で、だが酷く恐ろしい幻影を、視えないはずの二つの瞳が何もない空間にハッキリと映し出した。
 バーナビーは驚愕に目を見開く。

 これは…記憶…か…?

 闇から覗く二つの蒼い瞳。

 己を虜にしようとのばされる禍々しい腕。

「…め…ろ…やめろ…ッ…やめてくれぇッ!!」

 それから逃げ出すように、バーナビーは咄嗟に両腕で顔を覆い、エメラルドの瞳をキツく閉ざし…叫んだ。




「…助けて…オジサン…ッ」




 嘘…だ。

 有り得ない。


「俺は…今何て…?」


 思わず…素の自身が顔を覗かせるほどバーナビーは動揺した。そして、ゆっくりと腕を上げ、震える指で唇を覆う。まるで…今、己の吐いた人物の呼び名を無かったことにするかのように…。

 だが、バーナビーはふと気付いた。  
 あんなに冷え切っていた全ての空間が、今はなぜか温かい。

 …そして、己の心も…だ。

「ハッ…何だって言うんだ…まったくどうかしてる…」

 バーナビーは自嘲気味に嗤うと、己を責めるよ
うに自慢の髪をクシャクシャと掻き回した。




 リリリリン…。




 突然、エントランスのチャイムが鳴った。

「嘘…だ…」

 バーナビーは、二つの宝石を眩しいほどに輝かせ、震える声で再びそう呟いた。まるで今までの不調などなかったかのように一瞬で身を起こし、素早く眼鏡をかける。そして、転がるようにベッドを降り、インターホンも確認しないでそのまま裸足で部屋を駆け出していく。

 はぁはぁと息を弾ませ、エントランスの階段を滑るように駆け下りたその先に…




「オジサン…」

「バ…ニー…?」




《END》

バニーはインナーシャツとボクサーパンツ一丁でご主人様を待ち詫びたワンコのように部屋を飛び出して行きました…後で超絶自己嫌悪地獄に陥り、昼間元気が無かったバニーが心配でどうしても気になって、明日会えるのにわざわざ夜中に車を飛ばして会いに来たよく考えたらTPOまったく考えてないオジサンに八つ当たりするんだきっと…
「僕の輝かしい人生の恥部を作るキッカケを作ったあなた…一生忘れません。いや、責任取って結婚してくださいオジサン!!」

「お前…友達いねーだろ?…つーか変態だろ?!」

みたいなね♪

結局、ウチのバニーは変態扱いから抜け出せません…

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