妄想話T&B(兎虎)

□それが恋だと気付かないから(未完)
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 やはりさっき頭をどこかにぶつけたのかもしれない。

「ごめんな…バニー」

 見当違いのことをグルグルと考えている僕に、オジサンはそう囁くと、僕の頬を両手でそっと包み込み、唇に触れるだけのキスをした。

 僕の脳はそこで一度完全に停止する。

 気が付くとオジサンの姿は消えていた。

 残されていたのは、オジサンの震える唇の感触と、見慣れたハンチング帽だけだった。

 僕はバカみたいにハンドルを握り締めていた両手をゆっくりと離し、指先で自分の唇をそっとなぞった。

「…初めてだな…キスしたの」

 主に置きざりにされたハンチング帽を見つめ、僕はそう独り呟いた。
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