綴夢

未知毒との遭遇
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「長ェなぁ……」
「トリコ。ちゃんと聞けって」
「だってよぉ、肝心の解読不能な毒はどーしたよ?」
「それはこの先!……まったく、お前だって散々長ったらしく惚気話するくせに!」
「あ〜あ〜、分かったから続き!」


……それで、何とも形容しがたい空間で、出されたコーヒーを一口飲んだ。
ボクはコーヒーは普段飲まないけど、とても美味しいと感じたよ。あの老人の味覚と腕前はかなりのものだと思った。

でも、おかしいんだ。
たった一口飲んだだけなのに。
知らない間に脈拍が乱れていた。
この不可思議な空間に緊張したのか、ならじきに戻る、と思ったが。
全く収まらない。
むしろより乱れているようだ。
ボクは自分に落ち着け、と念じながらもう一口飲んだ。

不意に『どうぞ』って声がしたから慌てて顔を上げたら、さっきの彼女が焼菓子を持って来てくれていた。
『苦かったですか?』
心配そうに話し掛けられて、違うと言いたかったのに言葉が出なかった。体も上手く動かせなくてゆっくり首を振ったら『なら良かったです』って。ただそれだけなのに冷や汗が出た。

その後、ボクの背後で彼女が何か片付ける音が始まった。
老人は終始無言で、彼女の足音だけパタパタと響いていて。…たまに鼻歌らしきものも聞こえたよ。
…その微かな歌が、頭の中をぐるぐる廻って止まらなくなって、脈拍の乱れが動悸に変わって……何て言うか、急性アルコール中毒のような症状が出始めた。
動悸、呼吸困難、言語・身体能力の低下、痺れ、発熱発汗。今更だけど良く毒を押さえられたと思うよ。

……それで、ふと思った。
これって、本当にただのコーヒーなのか?って。



カップノナカニハナニガ?...

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