綴夢

未知毒との遭遇
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確かにブランクは有ったと思う。
占いを生業にして美食の世界からは離れていたからね。
もちろん離れたからといって、全く切り離した訳では無いけれど。
体が鈍らないようにほどほど鍛えてはいたし、グルメニュースのチェックも欠かさなかった。

だから初めは信じられなかったんだ。こんな場所で、しかもボクに解読不能な毒に遭遇するなんて。


その日は、仕事が山積みだったのに不思議と気分が乗らなくて。
何の気無しに占ってみたら『北西の方向に歩むと人生を左右する衝撃が』と。
だから店を閉めてその方角に向かってみた。町を抜けた先は『黙樹の森』だろ?とんでもない食材でもあるのかな、って。

で、町を出る直前で昼食を食べてない事に気が付いて、たまたま目に入ったカフェ…コーヒーの絵が描かれた看板が掛かっていたから…らしき店に寄ったんだ。
何て言うのか…いたってシンプルな店でさ。本当にカフェか?と迷っていたら、扉が開いたんだ。客らしき老婦人が出て来て、『ありがとうございました』とその人の背中越しに女性の声がした。
老婦人が歩き出したらその女性の姿が見えた。彼女の背中越し、ドアの向こうからコーヒーの香りが風に混ざって流れてきた。
一瞬間が開いて。『あの』って話しかけられた。ボクはコーヒーの香りにぼうっとしていたようで。『どうぞ?』って案内されて、慌てて中に入ったよ。

カウンターに物静かな老人がいて、ボクを見て軽く会釈をした。すぐ手前のテーブルに座ったけど、メニューが無いようだった。BGMは鳥の声で。店のすぐ脇に大きな木があったからね。大勢集まっていたようだよ。
とにかく、町に良く在るカフェの雰囲気にはほど遠い、不思議な空間だったんだ。

とりあえずメニューを貰おうとしたら、それより先にコーヒーが目の前に置かれてびっくりした。さっきの女性が運んで来たんだ。コーヒーの横にミルクとシュガーポットを添えて、『今日はもうパンは無くて…焼菓子でも良いでしょうか?』って困った顔で話し掛けて来た。
…目の前のコーヒーはボクが頼んだ物でなかったけど、ボクに出してくれたみたいだったからそのまま頂いたよ。ついでに焼菓子も了承した。

……何かこの辺りからおかしかったんだ。




フカシギナカンカク...

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