綴夢

その先に見える星
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「綺麗だね」

「綺麗ですね」



ボクらは夜空を見上げながら、小さく

ただ一言、呟いた



ボクの耳に当てた機械は

遠くの、けれど同じ星空を映す貴女の声と

柔らかな吐息も届けてくれて



「綺麗だね」



ボクはもう一度小さく、呟いた





七日の雨に隠れた星たちを

見られずにしょげたのはボクの方

特別な日の特別な星を

特別な貴女と見たかったのにと

告げたボクに不思議そうに微笑んだのは貴女



不思議そうな貴女の顔に

理由も分からず戸惑ったのはボク

答えを知った時のボクは

どんな顔をしていたのかな




特別だなんて。今日だけだなんて。

今日も、明日も。今までも、これからも。

星が輝くのは変わらないのに。

側にいるのは変わらないのに。







ボクは夜空を見上げながら

貴女も夜空を見上げながら



「綺麗だね」

「綺麗ですね」


繰り返し、繰り返し。伝え合った



肩が触れる距離にいても

遠く離れた大地に在っても

いつも同じ空を見上げて

二人同じ想いを胸に抱いた







今もボクは夜空を見上げて

貴女も同じ夜空を見上げて



「綺麗だね」

「綺麗ですね」



変わらない想いを言葉に乗せる







「あ、」

「星が今」

「流れ星」

「流れたね」




二人、同じ空を見て

二人、心通わせて

この先の未来に、二人

想い巡らせて





今日も、明日も。今までも、これからも。

星が輝くのは変わらない。

側にいるのは変わらない。




明日も、明後日も、一年後も、そのもっと先も。

そう笑って言えるように

変わらぬ二人でいられるように

夜空を眺めていられるように

笑顔のままでいられるように





「綺麗だね」

「綺麗ですね」

「今までも」

「・・・これからも」





貴女とボクと。

想い巡らせて、目を閉じた。









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