綴夢
□ね。
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「『ね』 …ってさ、」
「え？」
「最近、ボクの口から良く出るなって思ってね」
「…今も出ましたよ？」
「あ、そうだね」
「………何か」
「え？」
「企んでますね？」
「そんな事無いよ」
「じゃあ、何か隠してますね？」
「何も隠してないってば」
「本当に？」
「本当に」
「…怪しいですね…？！」
「怪しくないよ」
「本当に？」
「本当に」
「…………」
「隠してないからね？」
「どうでしょうね」
「…信じてないね」
「あ。」
「え？」
「最後に『ね』を付けるゲームですね？」
「そんなんじゃないってば」
「今日のココさんは、ちょっとヘンですネ？」
「…今の『ね』は、わざとだね」
「わざとじゃないですから、ネ？」
「ほらやっぱり。わざと言ってるよね？」
「ちょっとだけ、ネ？」
「まったく」
「だって……ねぇ？」
「この紅茶、美味しいね」
「新発売なんですよ」
「クッキーも最高だ」
「それはいつものですけどね」
「いつも最高なんだよ？」
「まぁ」
「パティシエも真っ青だね」
「ココさんは誉め上手ですね」
「ちなみにボク専属だからね？」
「クッキーが？」
「今の、分かってて聞いてるよね？」
「全然分かりませんよ？」
「キミが。ボクの、専属だからね」
「ボクの、専属の、…なんでしょうね？」
「…確信犯だね」
「だって……ねぇ？」
「からかってるね？」
「いいえ、全然」
「……このクッキー美味しいね」
「はぐらかしましたね？」
「ボクの口はクッキー専用になってるからね」
「まぁ」
「でも美味しいのは本当だよ？」
「ならもっと召し上がれ」
「ありがとう…って。たくさん作ったんだね」
「ココさんちのオーブンは本当に大きいですよね！」
「確かにそうだけど…ねぇ？」
「はい？」
「太っても良いんだね」
「良いですよ。ぽっちゃりココさんでもね」
「ぽっちゃりって」
「ふふ」
「ならキミもご一緒に。ね？」
「では一枚頂きますね」
「何故一枚？」
「太るから、ですよ？」
「…何だかずるいね」
「ずるくないです」
「ずるいよ」
「あら？クッキー専用のお口は？」
「………」
「ね、ココさん？」
「うん？」
「たくさん食べた時は、運動しましょうね」
「どんな？」
「ウォーキングとか？」
「ウォーキングね…」
「買い物がてら、町を歩くとか」
「それは良いかもね」
「では早速。支度してきますね」
「楽しかったですね」
「色々買ったね」
「ちょっと買いすぎましたね」
「そうでもないよ」
「いいえ。だって両手にこんな荷物ですよ？」
「ね、それもボクが持つよ」
「ココさんばっかり。悪いですよ」
「良いから、貸して。ね？」
「ココさんは、力持ちですね」
「とりあえずは男だからね」
「私、甘えてばっかりですね」
「ボクはもっと甘えてほしいけどね」
「残念な事にもう甘える荷物はありません」
「何なら、ねぇ」
「え？」
「キミも抱えて帰るけどね？」
「…良からぬ事を考えてますね」
「そりゃあ男だからね」
「じゃあ、ダメです」
「今のは、本心じゃないね」
「今はダメです」
「……言ったね？！」
「言っちゃいましたね！」
「…驚いた」
「…本心ですからね？」
「……………」
「なんて、ねっ」
「え。」
「ふふっ」
「…ボクをからかったね」
「本心ですって。ね？」
「……………」
「『ね』。…ってさ、」
「え？」
「今日もボクの口から良く出たよね」
「…今も出ましたよ？」
「あ、そうだね」
「本当に、ヘンなココさん」
『ね。』
伝えたい相手がいるからこそ、生まれる音。
「『ね』。…ってさ、」
「はい、」
「暖かい、言葉だよね」
「そうですね」
「ね。」
「ね。」
────ね。