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□interference
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†side C†




俺の毎日はとても満ち足りていて、幸せだと思う。









「……………しの、吉野。」

「ぅ……ん………、トリ……」

「おはよう。そろそろ起きろ、朝メシの用意もできてる。」

「ゃ……、まだねる……」



窓から差し込む陽日は、俺をさらに微睡(まどろ)みへ引きずり込む。

だけどそれを許さないのが、俺の恋人。


「いいから……、起きろ!!」

「ぅわぁっ!!」


トリは俺が包まっていた羽毛布団を引き剥がし、『さっさと顔洗ってこい』とだけ言い残して寝室を出ていった。

その時のちょっと不機嫌な顔のトリに少しだけときめいてしまったのは、絶対に秘密だ。




朝ご飯は、俺が最近買ったホームベーカリーを使ってトリが焼いてくれたパンだった。


「ほら、コーヒーだ。」


俺の黄緑のマグカップに、トリがエスプレッソを注いでくれる。このエスプレッソも俺が買ったエスプレッソマシーンで淹れたもの。だけどこれを使用しているのは専らトリだ。本来はブラックで飲むものであるエスプレッソだけど、トリは慣れた手つきで俺のマグカップに砂糖とミルクを加えてくれた。


「これくらいでいいか?」


ありがとうと一言告げて、マグカップに口をつける。トリが入れてくれた砂糖とミルクは、俺の舌を優しく包んでくれた。


カップを傾けたままチラッと向かいのトリを見ると、トリも水色のマグカップでエスプレッソを飲んでいた。


中身は俺と違ってブラックだけど、俺と形は同じ色違いのマグカップでコーヒーを飲んでくれているトリを見て、少し嬉しくなった。









「オイ吉野!!食べた後にすぐに寝るな!!」

「ん……、だってお腹いっぱいになったら何だか眠くなっちゃったんだもん……。」



再びベッドに潜り込み二度寝を試みようとしたら、トリに怒られた。

「そんな怒らないで、トリも試してみろよ………。二度寝って幸せだぞ……。」


枕に顔を埋めながらトリに提案すると、トリは意外にも『……そうだな』と俺の提案を聞き入れた。




「…………………て、おい!!何でベッドに入ってくんだよ!!」

「『二度寝をしてみろ』と言ってきたのはお前だ。」

いけしゃあしゃあとそう言ったトリは、そのまま後ろから俺を抱きしめてきた。

「ちょっ……、トリ………」

「………確かに。」

「え?」

「確かにお前の言う通り……幸せだな。」

「……………うん。」


俺が幸せなのは、トリが抱きしめてくれるからだよ。

そう言葉で伝えるのは恥ずかしいから、俺は回されたトリの腕に、そっと触れた。







「せっかく来たのに、残念だったな。」

「仕方ないよ、こんな時もあるよ。」


3時間ほど二度寝を楽しんだ後、トリと街に出た。切れかかっている画材を補充したら、トリが最近人気のカフェに行ってみようと提案してくれた。だけどいざ行ってみたら、そのカフェは臨時休業だった。



「だけどお前、あのカフェ行きたがってただろ?もうそろそろ今号分の原稿にも取り掛からないといけない。第一、年中引きこもりのお前が外に出てくるだなんて珍しい………」

「………お前、こんな時に仕事の話するなよな。」


『お前が毎回締切を破るのが悪いんだろ』というトリの小言は聞き流して、立ち並ぶショップの華やかなショーウィンドウに目をやる。


……本当は、カフェなんてどうでもいい。

トリとこうして2人で歩くだけで…、それだけで充分なんだよ、って。

せっかく言ってあげようと思ったけど、何だかムカつくから絶対に教えてやんない。









夜、俺はトリの腕の中にいた。


結局今日は1日、トリと街で買い物したり映画を観たり。トリの家に帰ってからはトリの作ってくれたご飯を食べて、お風呂に入って………………、えっちした。



普段はクールなくせして、こういう時トリはまるで獣みたいになる。

だけどそれは…………それだけ俺を求めてくれてるって証拠。そんなトリも実は大好き…………だなんて、恥ずかしすぎて口が裂けても言えない。


その張本人は今、俺を抱きしめたまま静かに眠っている。





「…………トリ?」

呼びかけても、反応はない。

頬を触ってみても、やっぱり反応はない。




「……………………。」



ただこうしてるだけなのにどんどん溢れてくる、トリへの“好き”。


好き、好き………トリが大好き。



生まれた時からずっと一緒だけど、それだけじゃ足りない。


人生の最期の刻(とき)まで、この生命(いのち)が尽きるまで、ずっと一緒にいたい。

離したくない、離れたくない。

トリを独り占めしたい………そう思ってしまう俺は、欲張りなのかな?





トリの肩越しから、窓を見た。


朝には陽日が差し込んでいた窓からは、今は青白い月光が差し込んでいた。










───1日が終わる。


特別なものなんて、何も要らないから。


だから明日も、トリの隣にいたい。


そしてそんな日々が、ずっと続けばいいと思う。




†side C† 〜END〜




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