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□そういえば、そんな事もありましたね。
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※付き合ってる設定です。律っちゃん捏造につき注意。
「……──ら、小野寺っ!!」
「へっ!?」
いずこの彼方に飛ばしていた意識が、高野さんによって引き戻される。
「『へっ!?』じゃねーよ。何なんだよさっきから、やけにボーッとしてるよな。この番組見てんじゃねーの?」
「えっ、あ……そーですよ!
いや俺、この歌手けっこう好きなんですよね〜。」
ふーん、と不審そうな顔をしている高野さんにハハッとぎこちなく笑いかける。
高野さんと付き合い始めて(一般的に言えばヨリを戻して)早3ヶ月。
今日も仕事が終わったあと高野さんの家で過ごしていた。
3ヶ月前なら『連れ込まないで下さい!』とキレていたところだけど、今はむしろ自分の意思でこの部屋にいると言っても良い。
といっても、高野さんはコーヒーを飲みながらソファーに座って雑誌を読んでるし。
俺は俺で地べたに体操座りでテレビを見ている。
ひとつの空間で各自違う事ができる恋人同士はとても良い関係を築けていると、以前何かで読んだことがあるけど。
今はそんな甘い優越感よりも、もっと重要な事が俺の中を支配している。
(早く………、早く言わなきゃ!)
そんな焦る気持ちに比例するように、手にじっとりと汗が滲んでくる。
その汗をジーンズで拭って、隣にある仕事用の鞄から財布を取り出した。
高野さんに気付かれないようにこっそり中身を覗くと、俺が頑張って稼いだ何人かの野口さん達に混じってお札ではない2枚の黒い紙が見えた。
今日の俺の目的は、コレを高野さんに渡すことだ。
それも……………………、横澤さんよりも早く。