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□僕の解けない純情数式
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某月某日、丸川書店本社ビル某所にて
「よおチビたん、元気にやってるか?」
「井坂さん。こんにちは、お久しぶりです。あ、そーいえば井坂さん社長になったんですよね。おめでとうございます」
「いやいや。出版業界を牛耳る俺様にとっては、こんなのまだまだ序の口だよ」
「そ、そーですか…(話のスケールでっかいなー……ま、俺には関係無いか)」
「あ、そうそうチビたん。ちょーっと聞きたいコトがあるんだけどさ………」
「え、何ですか?あ、ウサギさんの原稿のことですか?大丈夫です、相川さんと俺でちゃんと尻叩いて締切に間に合うように─────」
「いや、秋彦のことも重要なんだけどさ……その………っ、ちょっとコッチ」
「えっ……、へっ??(何でこんな物陰で体操座り?かくれんぼ?)」
「その、さ……チビたんって普段どうやって家事してんのかなぁ……と」
「(声ちっさ!!)えっ、家事……ですか?」
「そう、家事。ほら、チビたん大学も行って丸川でバイトもして、最近まで就活もしてて。しかも“あの”秋彦の世話もしてるだろ?それだけの事と家事をちゃんと両立してるんだから、何かコツとかあんのかなぁ〜……と。別に秋彦と分担してるワケじゃねーだろ?」
「(井坂さんって確か実家暮らしだよね?何で家事の事なんか……)えっと、取り敢えず朝はちょっと早めに起きて、朝ご飯とウサギさんのお昼ご飯と俺の弁当は一気に作っちゃいます。あ、時間があったら夕飯の下ごしらえもその時に。ご飯に関しては、面倒な時とか時間が無い時は丼物とかカレーみたいな大鍋で作り置きできるもので済ませちゃいますね」
「なるほどな………早起き、カレーの作り置き……」
「(メモ帳!?古典的だな……)え…っと、掃除はよっぽど散らかってない限り休みの日にまとめてやっちゃいます(クマ部屋とウサギさんの締切明けは平日でも掃除するけど、コレは世間的に例外だから今はシカト)。洗濯はなるべく朝とか昼間にやりますけど、どーしても間に合わない時は夜にも洗濯機回しますね。ただコレはご近所さんの迷惑になる場合もありますから、なるべく避けてます」
「掃除は休日……、洗濯はなるべく昼間に……」
「(何かブツブツ言ってるなぁ……)あと最後に。ウサギさんと家事分担“してない”んじゃなくて、“したくない”んです。俺だって、ウサギさんにもうちょっと生活能力があったら家事分担したいですよ」
「あー……、間違いないな。その点アイツなら大丈夫か……」
「え、何か言いました??」
「へっ!?べっ、別に何も言ってねーよ。色々ありがとな。じゃっ!!」
「あっ……ハイ、さようなら………何だったんだ、今の」
僕の解けない純情数式
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若者が先達になる場合もあるってコトです(笑)