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□スタートラインがいつも遠い
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「あ、社長だ。お疲れ様で〜す」
「ぅおっ!何だ木佐か……驚かせんなよな」
「え〜、だって天下の丸川書店の社長サマがこんなひと気のない休憩室に1人でいるんで、ちょっとびっくりしちゃって」
「………つか、お前が“社長”って言うととてつもなく卑猥に聞こえるな……」
「アハッ。お褒めに預かり光栄です、シャ・チョ・ウ」
「別に褒めてはないんだが……」
「で、さっきから社長は何見てるんですか?……あぁ、そのファッション誌ですか。エメ編にもさっき見本誌がどっさり届きましたよ。『資料に使って下さい』って。やっぱり社長になると自社の出版物はだいたいチェックするんですか?」
「いや、別にそういうワケじゃねーけど……」
「そーいえば、その雑誌の今回の特集って“同棲”でしたよね?山田先生の次の読み切りのテーマが同棲なんで、もうメチャクチャ大助かりで。あ、でも社長って確か実家暮らしでしたよね?だったら今はその特集にもあんまり興味無いですよね〜」
「いや、別に興味ねーワケじゃないし……それに、もうすぐ………」
「でもそーゆー雑誌の特集って、あんまり見ない方がいいですよ」
「え?」
「同棲前って、恋人との暮らしに夢とか憧れ抱いてるじゃないですか。その状態でこーゆーの読んで現実突きつけられると、意外とヘコみますよ〜。例えば………ほら、コレとか」
「えーと何々……《恋人と寝室は同じにしても、寝床はキチンと分けましょう》ーーーーーっっ!?えっ、嘘マジで!?ベッドわざわざ2つ買うのかよ‼2人で暮らすのに!?」
「そうそう。コレって最近の同棲事情の基本らしいケド、初めて知った時は俺もかなり精神的にやられましたよ〜。だってそれまで普通にダブルベッド買うつもりでしたもん」
「うわ〜、マジかぁ……(俺もダブルベッド買うつもりだったのに……)。……ん?てか木佐、お前いま同棲してんのか??」
「……フフッ、なーいしょ♪」
スタートラインがいつも遠い
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三十路は初恋が現在進行形だと、思考回路は未だにお花畑の乙女状態だと思います。
それが2人揃ったら美味しいですよね♪←俺得(笑)