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□貴方に溺れて嘲笑
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※これは《誰得俺得☆カナコHappyBirthday記念100%自己満小説》ですスンマセン。

※《誰得俺得☆カナコHappyBirthday記念100%自己満小説》ですから、たとえ井坂専務サマがキャラ崩壊していても謝罪はしません。だって今日はカナコの誕生日でこれは自己満小説だもん♪←くたばれクソ管理人





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───本来ならば寄り添い合っていられる筈なのに。

同じ時間を同じ空間で過ごしている筈なのに。


離れているのは、辛い。






















ソファーをベッド代わりに体を横たえたまま、暗闇に僅かに浮かび上がる白い天井を見つめた。


聞こえるのは、時計の秒針の音。

感じるのは………、寝室からの気配。




「……、………龍一郎様」


扉の閉ざされた寝室に向かって呟いたって、触れたい人はきっと出てきてくれない。



…………仕方ない。

全ては自分のせいなのだから。




















『アナタが好きです』

そんな言葉と同時に、小さく華奢な体は私に向かって傾いてきた。

鼻腔をくすぐったのは、いかにも女性らしい仄かな香水の香り。

知らないワケではない。ただ社内でたまにすれ違う程度の、こうして真正面から対峙しないと顔も思い出せないような、その程度の印象と関係。



だけど彼女は違うと言う。

私のことが好きだ、と。

入社してからずっと見てた、と。

そう言うのだ。

私の記憶が正しければ、彼女はおそらく今年度の新入社員。

私とは10歳以上の年の差がある。


たかが10歳、されど10歳。

ジェネレーションギャップを語るには微妙な年数だが、いくら人気のない廊下とはいえ勤務時間中の社内で異性に抱き着くとは、若さの成せる術なのかとある意味感心してしまう。




……だけど、その感心と僅かな隙が命取りだった。










「…………ハーイ、オフィスラヴもどきは却下ー」




「えっ……、…ぁ、い……、井坂専務!?」

「りゅ……、いちろう様……」

「おいおい新人ちゃ〜ん?丸川に社内恋愛禁止の社則は無いけど、ちょいと大胆過ぎじゃね?いやぁ〜、いいねぇ若いって」



ニコニコと笑いながら、軽い口調で茶化す龍一郎様。




「…てか、こんな可愛い子に好かれてお前も案外隅に置けねーな」

「…っ…、…………」

「………な、朝比奈」





そこに居たのは、“龍一郎様”じゃない。

あくまで“専務”の、井坂龍一郎だった。















いっそのこと、罵ってくれたほうがよかった。

いつもみたく、怒っていじけて拗ねてくれたら……どれだけ救われたか。





だけど龍一郎様はあの後も、いつもと変わらず平然と仕事をこなして。

仕事が終わったらまるで何事も無かったかのように、いつも通り私の家に来た。

何だかバツが悪くて、いつもなら言える『とっとと御自宅にお帰り下さい』が言えずに、なあなあな流れで龍一郎様は私の家に泊まることになった。



謝ろうにも、あまりにも龍一郎様が普段通り飄々と振る舞っているから、どうしても口から言葉が出てこない。





そうこうしている内に夜も更けて、龍一郎様は『もう寝る』と寝室へ。

“いつも通り”我が物顔で私のベッドを占領する龍一郎様を見て、どうしても同じベッドに入って龍一郎様の隣で眠ることができなかった。


誤解を解くことも謝ることも、結局はできず仕舞い。

今日ほど自分を情けないと思ったことはない。













……もう、何だか全てが嫌になってきた。


眠ってしまおう。


このまま起きていたって、自己嫌悪に陥る一方だ。

それに、こんな不安定な精神状態で龍一郎様のことを考えていたら…………、きっと龍一郎様に取り返しのつかない酷いことをしてしまいそうな気がする。















───
──────
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………体が、重い。

だけど、感じる温もりがどうしようもなく心地好い。

唇に、気配が近づいてくる。



あぁ………、これは───



「………龍一郎…、さま」

「ぇ……っ…」




そっと目を開けたら、そこには龍一郎様がいた。


私が目覚めたことに龍一郎様は驚いた顔をしているけれど、それはこっちも同じだ。



端から見たら、龍一郎様はソファーで寝ている私の上に乗って、まるで夜這いでも仕掛けているかのようなのだから。


────その上、眠っている私にキスまでしようとして。




「な………っ、何で起きてんだよ!!」

「いや…、何でと言われましても………」


私の上に乗ったまま龍一郎様は憤慨し、私はそれに曖昧な返事しかできない。








…………今だ、言うなら今しかない。

私が1番大切に想ってるのは龍一郎様だと、愛してるのは龍一郎様だけだと。

伝えるなら、きっと今だ。




「…あの、龍一郎様。私は───」

「……………んで」

「え…………?」



伝えようとした私の言葉を、龍一郎様が遮った。

そして龍一郎様は下を向いたまま、私の両肩を掴んだ。




「何でお前は……、…そんな涼しい顔できんだよ」

「龍一郎様…………?」

「おれ……俺、は………今日のことは不可抗力でお前は悪くないってわかってたから…、だから……、………頑張って普段通りでいたけど……やっぱり思い出すとイライラするしムカつくし、でもアレは朝比奈のせいじゃないって…必死に言い聞かせて………」

「…っ、………」

「なのにお前は……俺にあんなとこ見られたって全然平気みたいな顔して………、そりゃ10年付き合ってるから今更あの程度のことで騒ぐのはおかしいけど…でも、…………俺が愛想尽かすかも、とか………俺が朝比奈のこと嫌いになったらどうしよう……とか、少しくらいは気にしろよ!!気にしてたら………2人でいるのに離れて寝るとか…、できねぇ筈だろ………」

「龍……、いちろ…様」




私の上で一気に捲し立てられた、龍一郎様の本音。



「……………寂しかった、ですか?」


腕を伸ばして、龍一郎様の頬にそっと触れる。

暗闇だからわからないけれど、きっと龍一郎様の頬はほんのり紅く染まっていると思う。



「はっ…、ハァ!?なっ、なななな何言ってんだよお前!!そんなさっ…、寂しい…………とか、…、別にっ……俺、は………」

「私は寂しかったですよ」

「へ………?」




そう……寂しかったし、辛かった。



本来ならば寄り添い合っていられる筈なのに。

同じ時間を同じ空間で過ごしている筈なのに。


離れているのは、辛い。


本当に、辛くて寂しくて仕方なかった。




「龍一郎様が隣にいなくて、龍一郎様を抱き締められなくて。今夜は離れると決めたのは自分なのに、いざ行動に移してみたら………すごく辛くて寂しかったですよ」


「あさ…ひ、な………」




龍一郎様の私を呼ぶ声が、少しだけ震えていた。

本人は決して認めようとはしないだろうけど、きっと龍一郎様の瞳は涙で潤んでいるだろう。



本当に、こういうところが堪らなく可愛い。
















「………ひ奈なんか」

「え?」


ふいに、龍一郎様の口から言葉が零れた。




















「……朝比奈なんか、俺がいなくちゃダメになっちまえばいいんだ」

「…………」

「俺が傍にいなきゃズッタズタのボロッボロになって、他の奴らなんか気にもならないくらい………………俺のこと好きになればいいんだ」



「…………」




…………びっくりした。

この人の中に、こんな独占欲が眠っていたなんて。


あぁ…………、この部屋が暗いのが本当に恨めしい。


きっと龍一郎様は、今にも泣き出しそうな可愛い顔をしてるだろうに。

それを見られないのが、本当に悔しい。









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