main
□素直に嫉妬、できますか?
2ページ/5ページ
衝動のままに秋彦の家に来てみたものの、俺は自分の行動を酷く後悔するハメになる。
今日はチビたんも大学が休みだったらしく、キッチンでせっせと夕飯の支度をしていた。
人間、自分の心が荒んでいる時はとことん醜くなるようだ。
『べっ、別にウサギさんの為なんかじゃないし』とか何とか言いながらハンバーグのタネに混ぜるピーマンをミクロにみじん切りしているチビたんを見て、何故か無性に腹が立ってきた。
だから、チビたんにチクってやった。
『今度雑誌の企画で秋彦が対談する女流作家、40代だけどメチャクチャ美人なんだよなぁ。今流行りの“美熟女”ってヤツ?』
その後のチビたんの反応。
『俺関係ねーし』とか強がっても、やっぱり不安げな表情を浮かべる。歳を重ねた俺とは違って、若者は良くも悪くもすぐに感情が面に出るから面白い。
直後に書斎から出てきた秋彦も、チビたんのいつも以上にツンツンな態度を不審に思ったらしく。
俺が事の流れを説明してやったらソレが秋彦のドS心に火を点けてしまい、チビたんの図星をつきまくってからかい倒して遊びだす始末。
けれど、秋彦も曲がりなりにもやっぱりオトナ。押すばかりではなく、絶妙なタイミングで引いてみせる。
そんな引いた秋彦に焦ったチビたんが発した一言。
「うっ、ウサギさんは俺に構ってればいーと思うんだ!!」
潤んだ瞳で睨みつつも上目遣い。
強気な発言とは裏腹に、不安げに垂れる眉。
頬はこれでもかというくらい真っ赤。
叫んだ後、溢れ落ちそうな涙を堪えるように下唇を噛む。
秋彦は勿論、不覚にも俺までチビたんを
───『可愛い』、そう思ってしまった。