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□朝のおつとめ
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テロリストこと高槻忍さまと同棲を始めて2週間。
カップルが同棲に踏み切ると、『お互いの生活リズムやスタイルが違って、逆に同棲前よりすれ違いが多くなった。』とかいう話をよく聞くけど、幸いなことに俺たちはそのパターンには当てはまらなかった。
というよりも、学生と社会人という時点で生活リズムが違うということなど最初からお互いに分かりきっているから、その辺のトラブルは今のところ無い。
ま、あまり放置し過ぎると忍が拗ねるのは前々から知っているから、それは同棲していようがいまいが変わらないが。
そう、今のところ『目立った』問題は無い。
だが、『目立たない』問題は起きているワケで。
「…………お〜い。」
「………。」
「………忍ち〜ん?」
「…………。」
ダメだこりゃ。全くもって無反応。
「あのぉ〜……、そろそろワタクシメも出ないと、仕事に遅刻してしまうのですが……。」
「あーーーーっっ!!動くなよオッサン!!せっかく今いい感じだったのに!!」
朝の玄関で、俺と忍は向かい合っていた。
忍の視線と意識は、俺の胸元に注がれている。
「毎朝同じ事を申し上げていますけれど、ワタクシメはネクタイくらい自分でも締めれるのですが。」
「うっさい!!これは俺の問題だ!!宮城は大人しくしてればいいんだよ!!」
忍ちんは最近、俺のネクタイを締めることに全身全霊を傾けていると言っても過言ではない。
曰く、『新婚カップルはみんなやってる』そうにございます。
多分テレビとかの影響だろうと俺は睨んでる。この前けっこう昔のトレンディードラマの再放送やってたしな。
最初それを聞いた時は、またくだらない事考えて………と思ったが、自分で言ったクセに『新婚』というワードに照れるコイツを見て、『可愛い』と思わないほうが無理だろう。
今ドキの若者はスーツを着る機会が少ないからか、はたまたコイツが不器用だからか。
忍は毎朝、俺のネクタイと格闘を繰り広げる。
その為俺も、忍の格闘時間で遅刻しないように、同棲前より30分早く起きるようになった。