お題小説

□君とネバーランド
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子供の頃からずっと龍一郎様の傍にいたけれど、“恋人”になったからこそ気づいた事もある。




龍一郎様は、恋愛的思考が意外と乙女だ。









例えばセックス。

龍一郎様はセックスそのものより、その後のキスだとか触れ合いだとか他愛ない会話がお好きなようで。

終わってサッサとシャワーを浴びに行く……という雰囲気や情緒の欠片も無いことをしようものなら、最低でも2週間のお預けを覚悟しなければならない。

あと、目が醒めたら2人でベッドの上でコーヒーを飲むだとか。



これらはほんの一例。もっと根本的な事を言えば

『“おはよう”のキス』


これが基本中の基本らしい。



これをベースにオプションとして『毎日メール』だとか『休日はデート』だとかetc………







実際キスを忘れると、龍一郎様は拗ねる。

メール送信を怠れば、龍一郎様は拗ねる。

デートに誘わなければ、龍一郎様は拗ねる。


そして拗ねた時はいつも以上に構って甘やかしてあげないと、もっと拗ねる。



本当、龍一郎様は欲張りな人です。
























……………、え?

『我が儘で面倒な恋人ですね』……………………………………ですか?











…………ハァ、分かっていませんね。


これも、意地っ張りで不器用な龍一郎様なりの“甘え”なんですよ。


異常なまでに必死になって私と“恋人らしいこと”をしようとする龍一郎様を不審に思って、あの手この手を使って白状させました。





まぁ………少し啼かせてしまいましたが、その顔もとても可愛らしかったので良しとしましょう。









『だって5年後とか10年後は今の新鮮な気持ちも忘れて、キスもメールもデートも今より絶対少なくなるから…………、だったら今のうちに………』






これが、龍一郎様の主張。

要約すると『思う存分イチャイチャしたい』ということ。


『龍一郎様は“バカップル”になりたいのですか?』と尋ねたら、『バカヤローッ!!』という怒声と拳が飛んできました。


だけどその顔は真っ赤で、だけどまんざらでもなさそうでしたから、きっと龍一郎様は“バカップル”になりたいのでしょう。




……ね?確かに龍一郎様は“我が儘で面倒な恋人”ですが、考えることはとても可愛いでしょう?


それに何より。



龍一郎様が私との“10年後”を何の疑いもなく自然に考えてくださっていることが、私は嬉しくてなりません。


龍一郎様、そんなに不安にならなくても大丈夫ですよ。


龍一郎様が10年後も付き合いたての恋人同士のように在りたいのなら、私はその望みを叶えます。

“バカップル”、龍一郎様となら素敵だと思いますよ。

ただ私、世間一般の“バカップル”というものをよく存じ上げません。次の機会までにしっかりと勉強して参ります。



ですが龍一郎様、ケジメはきちんとつけて下さいね。

貴方には丸川書店の頂点に立って頂かねばなりません。熱に浮かれて成すべきことを怠ってはなりません。私も、職場では自分が貴方の恋人であることは忘れて厳しくいきますからね。


その代わり、プライベートではたっぷりと甘やかしてあげます。たとえ貴方が『嫌だ』と言っても、離してなんかあげません。存分に構い倒します。いくらでも言いなりになってあげますよ。




ですから龍一郎様。



どうか10年後も、その先も。


ずっと私の傍にいて下さいね。











────現在。





「龍一郎様、龍一郎様。」

「…う…ん…、あさひ、な?」

「やっと起きられましたか。お身体の加減は如何ですか?」

「別に………、何ともない。」

「そうですか。昨夜は一段と激しかったので、龍一郎様の腰のほうを心配していましたが………」

「〜ッッ!!てゆーかそれはお前がっ…………………!!ってぇ…………」

「それはそれは、申し訳ございませんでした。ただいま何か飲み物を…………。」

「………朝比奈。」

「はい?」

「……っ、…………。」

「……あぁ、申し訳ございません。忘れておりました……。」


















───……チュッ










「……おはようございます、龍一郎様。」

「…………おはよ。」












君とネバーンド
(いつまでも変わらずに)











─────誰も知らない可愛い貴方を、ずっと独り占めしていたい。








 

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