中編・短編

□机の上の恋
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なんでこうなっちゃったんだろう…





こんなはずじゃなかったのに…




外は薄暗くなりはじめ


部活を終えた生徒達が校門を出ている





でも、智の学校はこれから始まる




定時制ってやつ



なんで定時制に行くことになったとかなんてどうでもいい…




本当は学校なんて行きたくもない。




全てがどうでもよくて


生きる意味さえ見出せない智の人生に意味はあるのだろうか…





そんなふうにどうでもいいことを考えていたら一日なんてすぐ終わる





先生の授業なんて聞かずに窓の外を眺めていた。






もうすっかり真っ暗になって外はほとんど何も見えない




だから、机に突っ伏した




すると、


机の左下の方にラクガキを見つけた。





それは、上手に誰かの横顔が書かれていた。




この人、絵上手だな〜なんて思って眺めてたら



少し、イタズラしたくなって



ヒゲを書いたりメガネを付けたりしていた。




つまらない授業も終わり帰宅の時間




特に理由があったわけじゃないけど



その横顔の下に


"ラクガキはいけませんよ"




と書き加えた。


ふふっ笑




智、ラクガキのセンスあるかも



綺麗だった横顔がなんかものすごくなっちゃった。








次の日




またいつもと同じことが繰り返される






智はまた窓側の1番端の席に座った





その机は昨日ラクガキしてあった机で




ふと、左下を見ると




"お互い様ですよ。"





って書き加えられていた。



あー智がヒゲとか書いたことに怒ってるんだ。



これだから優等生は…



ここの全日制の生徒達はいわゆる優等生ばかりで、
中学の頃から勉強しかしてないような人ばかり





"ごめんなさい"



ただその一言だけ書いた






次の日




同じ席に自然と座った




ラクガキは




"謝らないでくださいよ!面白かったですよ!"





なんだ怒ってなんかいなかったんだ



少しホッとした



どこの誰だかわからないし顔も見たこと無ければ、話したことすらないのに…




それから、机の上だけでやりとりする日々が続いた





こんなの初めてだった…



今はメールとか一日に何通もやりとりするのに


これは一日一回だけ



週に5回しかやりとりできない






でも、なんだか楽しくて学校に行く意味を見つけた






色々と聞いた




この机の持ち主は



名無しくんって人で

サッカー部に入ってる



本人いわく、全然モテないらしい





でも、名無しくんは智のことを少し恐がってる感じがした



定時制って少し恐れられてる気がする






そして、智は名無しくんに会ってみたくなって




"名無しくんってどんな人なのかな?見てみたいな〜"






そう書いて学校を去った





次の日




少し急ぎ足で教室に入った



何、智、浮かれてるんだろう…




机の上には



"いやいや、そんな会ってがっかりされたら嫌だよ"






そうなのかも…



これってお互い顔もわからないから色んなこと書ける。



もしも智が名無しくんの顔が分かってたらこんなことしてない可能性もあるかも…




そんなことを考えながらふと窓の外を見た




(おーい。名無しー!ちょっと待てって!)





誰かが声を張り上げて言った




それに反応した人が振り返った




もしかしたらあれが名無しくん?…




背が高くて

イケメンで


女の子と楽しそうに話していて




自分の頬が赤くなるのを感じた




そして、しばらくぼっーと眺めていると




先生に当てられた。







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