歌王子

□嗚呼、素晴らしきニャン生
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※『嗚呼、素晴らしきニャン生』
       ♪GUMI&鏡音レン/Nem









「これはこれは、
可愛いお嬢さん。」



暗闇からにゅ、と現れたのは
真っ黒な毛並みの野良猫。



「だ…っ!?
誰が"お嬢さん"だよ。
俺はオスだっつーの!!」


「おや、これは失礼しましたぁ。
真っ白な毛並みが綺麗だったので、つい。」


「当然だろ?
み…水は嫌いだけど…さ…
風呂には毎日入ってんだからな!!」



俺様は綺麗好きだからな。
少しでも汚れたら嫌いな水でも
がんばって我慢する。



「では、月も綺麗なことですし…
一緒に遊びに行きましょう?」


「…なぁ、聞いてたか?」


「あぁ…首輪ですか?
僕が咬みちぎってあげますよ。」


「ちっがぁあう!!
俺は汚れるのが嫌なの!!
この首輪はブランドものなんだぜ?
まあ、お前にはわかんないだろうけど。
咬みちぎるとかいうんじゃねーよ!!

それに…お前随分と口が上手だな…
でも!!俺様はバカじゃないからな。」



シャッとカーテンを閉めてしまうと
「ちょっ…ごめんね!!」と聞こえてきたので
少しだけ開けて様子をみてみた。



「でも…ニャン生は一度きりです。
自由に生きたくはないですか?」



野良はいいですよぉ〜、
と黒猫はドンドン話し始めた。

昼は人間を尻目に
魚屋から盗んだ魚を食べ、
屋根の上で夢を見る。


あ、僕は"那月"ってみんなから
呼ばれています。



興味はあった。

でも…



「俺は…ニャン生が一度きりだからこそ
飼われてるんだよ。」



毎日優しくしてもらってるし、
それに……



「な…那月は…
誰に守ってもらうんだよ?
明日、車にひかれるかもしれないだろ?」


「そうですね〜…
守ってもらう人はいないですが…
守りたい人がちゃんといます。

お名前聞いてもいいですか?」


「あっそ。俺は"翔"」



それでも俺は…
この家から離れることができない。



「僕の夢、聞いてくれますか?翔くん。」


「なんだよ、手短にな。」


「ありがとうございます。
僕の夢は、遥か北の海に行くことです。
そこで、オーロラを見るんです!!

そこに…
翔くんがいてくれたらいいのですが…」


「バカだな、
そんなこと言われたって
全然心揺らがないぜ?」



くすっ、と笑うと那月も
俺につられて笑った。

俺だってそのオーロラ
ってやつを見てみたい。



「でもな、生き方っつーのは
そう簡単に変えられねぇんだ。

それに、俺を飼ってる
アイツをひとりにできねぇよ…。」



不器用だけど、一生懸命
俺を守ってくれる優しい飼い主。

俺はアイツが大好きだ。
だから…アイツを残して
この家からいなくなるなんて
俺にはできない…。


ってぁぁあ!?



「ちょ…お前!?
まだ話の途中だぁぁ!!

…また…遊びに来ても
いいんだからなっ!///」


「はい!!」




fin.

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