歌王子

□おやすみ、ヘヴン
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「はっくしゅ!!」



やっべー…クラクラするし寒い。
ペタ、と自分の額を触ると、
自分でもわかるぐらい熱い。

完璧に風邪をひいた。


それでも、1年しかない学園生活を
休みたくなかった。



「翔ちゃん?どうしたんですか…
なんだか顔が真っ赤…」


「なんでもねぇよ。
ホラ、早くしねぇと遅刻すんぜ?」


「………うん。」



那月にバレれば物凄く心配する。
誰かに心配されるのはもう嫌なんだ。

俺は何でもないように部屋を出たけど
でも那月は納得が行かないようだった。


それからの授業はなんとなく過ぎていった。
頭がボーっとして集中できなかったけど
やっと昼休みまできた。



「トキヤ、レン、翔!
お昼食べにいこう!」


「音也、声が大きいですよ…
………翔?どうかしましたか?」


「今日は随分と静かじゃないか、
どうしたんだいおチビちゃん?」


「な、んでもない…」



もう普段の自分を保てない。
とりあえず返事するのが精一杯。



「なんでもない状態には
とても見えない。来栖、無理をするな」


「………はぁ…っ
風邪…ひいた………寒い…」



やっぱり、という顔をするマサ。

あーなんだ、バレバレだったのか、
俺、演技下手なのかな。


ペタ、っと今度は那月の手が
俺の額に触れた。



「…!!……翔ちゃん…
どうして我慢するんですか!
ひどくなっちゃったらまた…病院に
行かなくちゃいけませんよ!」



珍しく怒鳴る那月に
俺以外のみんなが驚く。

俺はまぁ…なれてるし。



「とにかく保健室へいきましょう。」



トキヤが言うと那月が俺を
お姫様抱っこする。



「やっ…おろせ、那月っ…!」


「翔は病人なんだから
俺たちに甘えてればいいんだよ、」


「そうだよおチビちゃん、
イッキの言うとおりさ。」



保健室につくと先生は出張で
誰もいなかった。

那月は俺をベッドへ寝かせた。



「さ、翔ちゃん!寝てください!」


「え…?」



ポンポン、と小さい子をあやすように
那月が俺の腹をリズムよく叩く。

いやいやいやいや…
そんなにみんなにガン見されてたら
寝れねぇだろっ!!



「あのー…さ…」


「どうした来栖」


「どこか痛いのですか?」


「あ、冷えピタいるかい?」


「俺氷まくら作るよ!」



みんながバタバタと動き出した。

うーん…騒がしいけど…
なんかコッチのが落ち着いてしまう。



「あれ…翔?」


「すー…」


「寝ちゃいました」



俺の記憶はそこまで。

目が覚めたら氷まくらになってて、
額には冷えピタ、水が用意されてて
熱も下がっていた。




fin.

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title by Chien11






 

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