歌王子

□心に侵入者有り
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「この辺でいいよな。」



日向先生に頼まれて俺は
資料室に荷物を置きにきた。
ドサッと荷物をおろすと
古い扉をガラガラと閉めた。

この資料室周辺の廊下は
何故か人通りが少ない。
滅多な用事がなければ
こんな場所こないだろう。



「っ?」



その時誰かに見られている
気がしたけど、周りには誰もいなかった。

気のせいだ。


そう思って俺は歩き出した。
けど、やっぱり誰かいる。

コツコツと俺が歩く音に加えて
もう一つの足音がする。
まさか…まさかとは思うけど…

俺は立ち止まってみた。
そしたらもう一人の足音も止まった。

やっぱり…ストーカー!?

俺は走り出そうと踏み込んだ。



「来栖翔くん」


「え?」


「捕まえた。」



パシッと掴まれた腕は
俺よりも力強くて、とても適わない。

ドンドン壁の方へ追いやられる。



「やめろ…離せ」


「嫌だ、といったら?
やっぱり翔くん可愛いなぁ。
食べちゃいたいぐらいに。」


「ひ…やだ…離せよ、ひゃあっ…!!」



スルスルと制服の下に入り込んでくる手。
自分の声が信じられなくて
両手で口を塞ごうとした。



「ダメだよ、声聞かせてよ。」


「やぁ…!!んん…っ。」



両手を頭の上でまとめられた。
精一杯、声を出さないように
俺は口を閉じた。



「聞かせてよ、翔くん。
……悪い子にはキスしちゃうよ。」


「ぅえっ!?…んーっ!?」



イヤイヤと首を振って否定するが
相手もそう簡単には逃してくれない。



「なにやってるの。」



諦めかけたときに聞こえた声は
聞き覚えのある彼らだった。



「翔ちゃんを離してください。」


「離したところで
ただで逃がすわけないけどね。」



パチンとウインクを飛ばすレン。

すると俺を縛っていた男の手が緩んだ。
俺隙をついて逃げ出した。



「大丈夫ですか、翔。」


「ぅ、うん…」



でもホントは凄く怖かった。
手足だってまだ震えてる。

それをみた那月がぎゅ、っと
いつもみたいに、だけど優しく
抱きしめてくれた。



「残念だが、もう逃げられないぞ。」


「リューヤさんたちも呼んだからね。」


「おとなしくしていてください。」



そのあと聞いたら
ソイツは退学が決まったらしい。



「翔ちゃん、大丈夫ですよ。」


「うん…」


「翔、すぐ来れなくてごめん…」


「うん」


「もう大丈夫だ。」


「うん、…っ」


「翔?」



気がついたら泣いていて、
恥とかプライドなんかとっくに
捨てて大泣きして…

ずっと俺が泣きやむまで
みんな、俺のそばにいてくれた。



「ありがと…な…。」







*****



風音様リクエスト!!

リクエストありがとうございました。
ご期待に添えられたでしょうか…?
なんか違う…って思われたら
遠慮なく言ってくださいね!


風音様に限り、お持ち帰りや
修正リクエスト受け付けます!



title by Chien11





 

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